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Dublin Core(ダブリン・コア)を使った“作品情報の標準化”完全ガイド

アート・デジタルアーカイブを構築するとき、最初に必ずぶつかる壁が

「どんな項目を入力すればいいのか?」

という問題です。

自由に決めてよいと言われても、後から項目を増やしたり減らしたりすると、

データがバラバラになり、見返すたびに矛盾が生まれます。

そこで役に立つのが、世界共通のメタデータ標準 Dublin Core(ダブリン・コア) です。

Google、図書館、大学、博物館からオープンデータまで、

あらゆる領域で採用されている最も有名な国際規格です。

本ガイドでは、初心者でも迷わず使えるように、

Dublin Coreの基本・実践的な入力例・統一ルールの作り方・導入メリットまでを

丁寧に解説します。


Dublin Coreとは?最重要の国際規格を初心者向けに解説

アーカイブに必要な項目は、組織や作品によって柔軟に変えるべきですが、

“最低限の共通言語” が存在しないと、アーカイブは必ず破綻します。

その共通言語の役割を果たすのが Dublin Core です。


Dublin Core(ダブリン・コア)は、世界中の図書館・博物館・研究機関で採用されている

メタデータの国際標準規格 です。

以下の15項目で構成されています。

(※実際には拡張項目も多数あり)

  1. Title
  2. Creator
  3. Subject
  4. Description
  5. Publisher
  6. Contributor
  7. Date
  8. Type
  9. Format
  10. Identifier
  11. Source
  12. Language
  13. Relation
  14. Coverage
  15. Rights

この15項目は“最低限の普遍的な情報”だけを抽出した、非常に洗練された設計であり、

アート作品・写真・映像・文書・資料など、あらゆる対象に適用できます。


必須項目(Title / Creator / Date / Type / Format など)

アート・デジタルアーカイブを構築する場合、Dublin Coreの項目すべてを使う必要はありません。

まずは “作品情報として必須の5項目” を押さえるだけで、

アーカイブとして十分に機能します。


以下はアート作品で必須となる代表項目です。


■ Title(タイトル)

作品名。

もし未命名なら「無題(2024)」のように表記統一する。


■ Creator(制作者)

作家名。

漢字・ローマ字・ふりがなの統一を決めておく。


■ Date(制作年)

最低限「西暦」だけでOK。

年月日がわかる場合は “YYYY-MM-DD” で統一する。


■ Type(作品種別)

絵画/立体/写真/版画/デジタルなど。

分類をあらかじめ“固定リスト化”しておくと整理しやすい。


■ Format(素材・サイズ)

Format では主に

  • 材料(油彩/アクリル/陶)
  • サイズ(cm表記)

    を入力する。

表記ルール例:

「727×606mm|アクリル・キャンバス」

「H30×W20×D20cm|陶土」


■ Identifier(識別子)

作品番号。

年度と通し番号の組み合わせが最も安定します。

例:

2024-001

2024-002

Identifier を付与するだけで、データが劇的に管理しやすくなります。


任意項目(Coverage / Relation / Source など)の使いどころ

必須項目だけでも十分運用できますが、作品の背景情報を残したい場合は “任意項目” を使うとデータの価値が一気に高まります。ただし、使いすぎると入力負担が増えるため「必要な場面」だけに限定するのがポイントです。


以下はアート・デジタルアーカイブで役立つ任意項目です。


■ Coverage(場所・地域)

作品が制作された場所、テーマになった地域、展示場所など。

例:

「Hiroshima」

「Kyoto Art Center」

地域性が強い作家の場合に非常に有効です。


■ Relation(関連資料・シリーズ)

シリーズ作品や関連する展示などを紐づけるために使う。

例:

「Relation: Blue Landscape Series」

「Relation: 2022 Solo Exhibition」


■ Source(元資料・参考資料)

参考にした下絵や資料を示すことができる。

例:

「Source: Sketchbook #12」

制作プロセスを重視する作家には重要。


■ Description(作品説明)

短い説明文。

本来は必須に近い項目だが、負担が大きいため任意扱いが実務向き。

例:

「風景の記憶をテーマにしたシリーズ作品。光のにじみを意識して制作。」


■ Rights(権利情報)

著作権者の表記。

作品貸出時や二次利用時に役立つ。


作品アーカイブでの実際の入力例

Dublin Coreは抽象的な概念に見えるため、具体的な入力例が理解の助けになります。以下は“実際の作品を登録した場合”のサンプルです。これをテンプレート化すれば、作家もギャラリーも迷わず運用できます。


● 例:絵画作品(青い風景)

Title:青い風景

Creator:山田太郎(Taro Yamada)

Date:2024

Type:Painting

Format:727×606mm|アクリル・キャンバス

Identifier:2024-003

Description:光の揺らぎをテーマに制作した抽象風景画。

Coverage:Hiroshima

Relation:Blue Landscape Series

Rights:© Taro Yamada


フォーマット統一のルール(cm/技法/ジャンル)

アーカイブが「検索できるデータ」になるか、「混乱の山」になるかは、フォーマット統一にかかっています。特に作品サイズや技法は表記揺れしやすいため、初期段階でルールを固めることが必須です。


■ 統一すべき代表項目

  1. サイズ(mmかcmで統一)
  2. 技法名(“アクリル”か“アクリル絵具”か統一)
  3. 材料の順序
  4. 横×縦×奥行の順番
  5. 表記言語(日本語/英語)

■ 推奨ルール例

  • サイズは「mmまたはcm」で統一(例:H30×W20×D20cm)
  • 技法は固定リスト化する(Oil / Acrylic / Mixed media など)
  • 素材は「支持体 → 描画材 → 加工」の順に書く
  • 同シリーズは必ず同じ分類語を使う

こうした小さな統一が、長期保存において非常に大きな意味を持ちます。


Dublin Coreを導入するメリット(将来互換性)

メタデータは“今”だけのために作るものではありません。むしろ、10年後・30年後・他システムへの移行を考えたときに「どれだけ互換性があるか」が最重要です。Dublin Coreを使うことは、将来への投資でもあります。


■ メリット①:他システムに移行しやすい

AtoM、Omeka、WordPress、図書館システムなど、

どのシステムでも Dublin Coreが軸 になっています。


■ メリット②:データの寿命が長くなる

独自形式ではなく国際標準のため、

将来的に読み込めなくなるリスクが少ない。


■ メリット③:外部機関との連携が容易

  • 大学
  • 研究者
  • 他館
  • オープンデータ

これらとデータを共有しやすくなります。


■ メリット④:メタデータの“拡張”が容易

必要に応じて項目を増やしたり、別の規格に接続しやすい。

例:

  • Schema.org
  • LOD(Linked Open Data)
  • デジタルミュージアム規格

まとめ:標準化は“長期保存”の第一歩

アーカイブの最終的な目的は、作品や資料を“未来に耐えさせること”です。そのためには、個人の感覚ではなく“標準化された共通のルール”が必要です。Dublin Coreは、その基盤となる最も広く使われた国際標準です。


Dublin Coreを使うことで、

  • 作品情報の統一
  • 長期保存の安定
  • 将来のデータ移行
  • 他館・他システムとの互換性
  • 情報の再利用性

が確保されます。

アーカイブは、「記録すること」が目的ではありません。

“未来でも読めるデータを残す” ことが目的です。

その第一歩が、Dublin Coreによる標準化なのです。

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。