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複数作家の情報管理を効率化するアーカイブ術

複数作家を扱っているギャラリーほど、情報管理は一気に複雑化し、

「作家1人のポートフォリオ管理」とは別次元の課題が出てきます。

作品・在庫・展示歴・プロフィール・価格・委託状況──

これらが作家ごとにフォーマットも命名規則もバラバラで届くと、

ギャラリー側のデータ管理はあっという間に破綻します。

本稿では、複数作家を扱うギャラリーが

“情報地獄”から抜け出し、

誰が見てもわかる・迷わない・共有しやすいアーカイブ体制 を作るための

標準化手法をまとめます。


複数作家を扱うギャラリーの“情報地獄”とは?

ギャラリー運営の現場では、

情報の整理がうまくいかないことで、

信じられないほどの時間ロスが発生します。

よくある状況は次の通りです。


よくある“情報地獄”の例

  • 作家ごとに画像の名前が全く違う

     (IMG_0001、作品名、日付、バージョン違い…混在)
  • 作品画像はあるが、サイズ・技法・価格がどこにも書かれていない
  • 経歴のフォーマットがバラバラで、展示歴が統一されていない
  • 最新の在庫状況がメール・LINE・紙・口頭で分散している
  • 委託書類や販売履歴が作家別に整理されておらず、探すのに数分〜数十分かかる
  • 過去展示の写真はあるが、どの展示か判別できない

     (ファイル名が「展示」だけなど)
  • 「この作家のプロフィールはどれが最新版?」となる

1〜2名の作家なら何とかなるものの、

5名、10名、20名と増えると

ギャラリーの運営時間の多くが“情報探し”に奪われる という問題に直面します。

情報の形式が統一されていない状態は、

ギャラリーにとっての“コスト増大”であり、

アーカイブ整備は単なる管理作業ではなく、運営効率を上げるための投資なのです。


作家別フォルダと“統合アーカイブ”の役割分担

複数作家を扱うギャラリーがまずやるべきは、

「個別」と「全体」を分けること」です。

これは業務効率化の基本でもあり、

アーカイブ破綻の最大の原因は

「全部を1箇所に混ぜて保存すること」 にあります。


作家別フォルダ(個別管理)

目的:その作家だけの情報を完結させる

フォルダ例:

/Artists  

 ├A_Suzuki  

 │ ├Profile  

 │ ├Works  

 │ │ ├2023  

 │ │ ├2024  

 │ ├Exhibition  

 │ └Sales  

 ├B_Tanaka  

 │ ├Profile  

 │ ├Works  

 │ ├Exhibition  

 │ └Sales  

 └…


統合アーカイブ(横断管理)

目的:ギャラリー側の“意思決定”のための情報セット

例:

/Gallery_DB  

 ├Works_All (全作家の作品データベース)  

 ├Artist_Profile_All (プロフィール一覧)  

 ├Exhibition_History (展示記録)  

 ├Inventory (在庫管理)  

 └Sales (販売データ)


この2つを分けるだけで管理効率は劇的に改善する

  • 個人フォルダ:作家ごとに完結
  • 統合アーカイブ:必要なときに横断して比較・判断

「混ぜない」が最大のポイントです。


情報項目を標準化する(作家共通フォーマット)

複数作家管理が破綻する最大の理由は

「情報形式がバラバラ」 という一点に尽きます。

ギャラリー側に必要な情報項目を

最初から“フォーマットとして要求する”ことで、

データの揺れが一気に減ります。


プロフィール(統一フォーマットの基本)

作家に渡すフォーマット例:

  • 氏名(漢字/英字)
  • 生年
  • 出身地
  • 学歴
  • 職歴
  • 受賞歴
  • 主な展示歴
  • 作家ステートメント(200字以内)
  • プロフィール写真(横1枚・縦1枚)

ギャラリー側には

“書ける作家と書けない作家がいる”問題があります。

フォーマット化はその格差を埋めます。


作品情報(Dublin Coreを下地にする)

最低限の項目:

  • Title(タイトル)
  • Creator(作家名)
  • Date(制作年)
  • Technique(技法)
  • Material(素材)
  • Size(H×W×D / cm)
  • Price(販売価格)
  • Edition(版数作品の場合)
  • Image(代表画像1枚)

これを統一すると、

「作者による記述の揺れ問題」 が自動的に改善します。


展示歴(表記揺れをなくす)

例:

2023 「青と光のあいだ」○○ギャラリー(東京)

2022 「日常の断片」□□アートスペース(大阪)

書式統一のポイント:

  • 年 → 展示名 → 会場名 → 都道府県
  • 引用符は全作家で統一
  • 全角/半角も揃える

ギャラリー全体の資料価値が飛躍的に高まります。


委託作品・在庫管理の効率化方法

ギャラリーで最もトラブルになりやすいのが

委託作品の在庫と返却管理 です。

作品点数が増えると、

「預かったのはいつ?」「返したのは?」「どこに置いてある?」

が曖昧になり、クレームや誤解につながります。


委託管理に必要な3つの台帳

  1. 委託作品リスト(作家ごと)
  2. ギャラリー在庫台帳(全作家横断)
  3. 返却・販売履歴台帳

特に重要なのは「返却日」と「作品の所在」。

これが抜け落ちるギャラリーは非常に多い。


在庫番号の付け方(ギャラリー共通ルール)

例:

[作家略号]-[制作年]-[通し番号]

SZ-2024-012

ポイント:

  • 作家略号は2〜3文字
  • 年は西暦
  • 通し番号はゼロ埋め(3桁推奨)

これだけで情報の迷子が一気になくなります。


作家間のデータの揺れを防ぐルール設定

作家ごとに記述ルールが違うと

ギャラリー側の整理コストが跳ね上がります。


揺れが起きやすい項目

  • 技法名(アクリル / アクリル画 / アクリル絵の具)
  • サイズの単位(mm / cm)
  • 作品名の表記(「○○」 / ○○ / 『○○』)
  • 制作年(2023 / ’23)
  • 展示歴の書式
  • 画像の名前(IMG_0001、無題1、タイトル…)

ルール化のポイント

  • ギャラリー側で“決める”
  • 作家に“渡す”
  • 新作提出のたびに“チェックする”

特に次の3項目を統一すると劇的にラクになります。

  1. 画像の命名規則
  2. サイズ表記
  3. 技法フォーマット

画像命名の最適解

[作家略号]_[作品名]_[年]

例:SZ_青い記憶_2024

  • 名前変更でリンクが切れる
  • 同名ファイルが大量に生まれる
  • 権限設定が適当で漏洩の危険
  • スマホから誤って削除される
  • バージョンが乱立する

これらは仕組みづくりで防げます。


クラウドルールの鉄則

  1. フォルダ削除は禁止(管理者のみ)
  2. 名前変更は管理者の許可を得る
  3. 作家フォルダの構造は触らない
  4. 作業フォルダと保存フォルダを分ける
  5. 管理者は週1でバックアップを取る
  6. スタッフの閲覧権限を最小限にする

Google Drive、Dropbox、OneDriveのいずれでも

ルールを整えれば安定して運用できます。


まとめ:標準化で“共有資産”が生まれる

複数作家を扱うギャラリーにとって、

情報管理の最大の敵は“バラバラ”です。

  • バラバラなフォーマット
  • バラバラな画像名
  • バラバラな経歴
  • バラバラな在庫リスト

これらを統一するのがアーカイブであり、

標準化されたアーカイブは

ギャラリー全体の「共有資産」 になります。


✔ 標準化が生むメリット

  • スタッフ間の共有コストが激減
  • 新人スタッフでもすぐ理解できる
  • 展示企画の資料作成が速くなる
  • Web・SNS発信に使いやすい
  • デザイナーや印刷所とのやり取りがスムーズ
  • 作家との信頼関係が強まる
  • 展示記録が“資産”として蓄積される
  • 将来のデジタルアーカイブ移行もスムーズ

複数作家を扱うギャラリーは“情報のプロ”である必要があります。

その基盤を作るのが、

統合アーカイブ × 標準フォーマット × ルール化 の3点セットです。


デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討したい方はこちら
※現状の運用を前提にご相談を承ります

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。