アートイベントの企画運営・クリエイターグッズの販売

WordPressでアート・デジタルアーカイブは作れるのか?可能性と限界

「アートアーカイブを作りたい」と相談を受けたとき、

かなりの確率で出てくるのがこの質問です。

「WordPressでもアーカイブって作れますか?」

結論から言えば、

小規模であれば可能。ただし“本格的なアーカイブ”としては限界がある

というのが現実的な答えになります。

WordPressは非常に優れたCMS(コンテンツ管理システム)ですが、

もともと「ブログ・Webサイト運営」を目的に設計されたツールです。

そのため、アーカイブ用途では得意なこと・不得意なことがはっきり分かれます。

この記事では、

  • WordPressでできること
  • できないこと
  • AtoM・Omekaとの違い

    を整理しながら、「どんな人ならWordPressで十分なのか」を明確にしていきます。

結論:小規模なら可能、大規模は不向き

まず結論をはっきりさせておきましょう。

WordPressは以下の条件なら“実用的なアーカイブ”になります。

  • 作品数が数十〜数百点程度
  • 作家数が少ない(個人 or 小規模ギャラリー)
  • 公開・発信が主目的
  • 長期保存や国際標準への準拠は必須ではない

一方で、次のような場合には不向きです。

  • 数千点以上の作品・資料を扱う
  • 階層構造(fonds / series / item)が必要
  • 自治体・資料館レベルの長期保存
  • 他機関とのデータ連携を想定している

つまり、

WordPressは「簡易アーカイブ兼広報サイト」

AtoM・Omekaは「アーカイブそのもの」

という位置づけの違いがあります。


WordPressの強み(拡張性・運用しやすさ)

それでもWordPressが選ばれ続けているのには、明確な理由があります。

■ 圧倒的に運用しやすい

WordPressは、

  • 管理画面が直感的
  • 編集者が多く、属人化しにくい
  • 情報がネット上に豊富

という点で、「人が入れ替わる現場」に非常に強いツールです。

ギャラリーや個人作家の場合、

「ITが得意な人がいなくなった途端に更新できなくなる」

という事態は珍しくありません。

その点、WordPressは引き継ぎがしやすいのが大きな利点です。

■ Webサイトと一体で運用できる

アーカイブと広報サイトを分けずに済むのも強みです。

  • 展示情報
  • 作家プロフィール
  • 作品一覧
  • ニュース・コラム

これらを同じ管理画面で扱えるため、

「情報が分散しない」運用ができます。


カスタム投稿タイプでアーカイブ化する方法

WordPressでアーカイブらしい構造を作るには、

カスタム投稿タイプ(Custom Post Type) を使うのが基本です。

■ 代表的な構成例

  • 投稿タイプ:作品
  • 投稿タイプ:作家
  • 投稿タイプ:展示

それぞれを分けることで、

「ブログ記事」と「アーカイブデータ」を混在させずに管理できます。

例えば「作品」投稿タイプでは、

  • タイトル
  • 制作年
  • サイズ
  • 技法
  • 価格
  • 所在

といった項目を個別に持たせることができます。

この構成をきちんと作れば、

見た目上はかなり“アーカイブっぽい”サイトになります。


必要なプラグイン(ACFなど)の紹介

WordPressでアーカイブを作る場合、

ほぼ必須になるのが以下のプラグインです。

■ Advanced Custom Fields(ACF)

作品情報を「項目として」管理するための要です。

ACFを使うことで、

  • サイズ
  • 技法
  • 制作年
  • 所在

    などを、文章ではなくデータとして入力できます。

これは検索性や再利用性の面で非常に重要です。

■ Custom Post Type UI

カスタム投稿タイプをGUIで作成できます。

コードを書かずに構造設計できるため、初心者でも扱いやすいです。

■ 検索・フィルタ系プラグイン

  • カテゴリ検索
  • 年代別表示
  • 作家別絞り込み

などを実装することで、

「見る人に優しいアーカイブ」になります。


WordPressアーカイブの限界(専門的機能が不足)

ここが一番重要なポイントです。

WordPressでアーカイブ“風”のものは作れますが、

専門的なアーカイブ機能は根本的に不足しています。

■ 階層構造に弱い

AtoMのような

fonds → series → item

といった多階層構造は、WordPressでは無理があります。

カテゴリーで代替することはできますが、

本来のアーカイブ理論とは異なります。

■ 国際標準に準拠しにくい

  • ISAD(G)
  • Dublin Core
  • OAI-PMH

といったアーカイブ標準への対応は、

WordPressでは基本的に自前実装になります。

これは自治体・資料館用途では致命的です。

■ データの将来互換性が弱い

WordPressはCMSとして優秀ですが、

「50年保存」を前提とした設計ではありません。

長期保存・他機関連携を考えるなら、

専用アーカイブシステムに分があります。


AtoM・Omekaとの比較(得意分野の違い)

ここで整理しておきましょう。

システム得意分野
WordPress小規模・広報・運用のしやすさ
Omeka S展示・公開・教育活用
AtoM本格保存・大量資料・自治体

WordPressは「入口」として非常に優秀ですが、

最終ゴールとして使うかどうかは慎重に判断すべきです。


WordPressが向いているケース

以下に当てはまるなら、WordPressは十分な選択肢です。

  • 個人作家の作品整理・公開
  • 小規模ギャラリーの在庫+広報
  • 展示記録のアーカイブ
  • SNSと連動した発信
  • 将来、別システムへ移行する前提

実際、

「まずWordPressで整理 → 後にOmekaへ移行」

というステップは、非常に現実的で失敗が少ない方法です。


まとめ:簡易アーカイブならWordPress

WordPressでアート・デジタルアーカイブは作れます。

ただし、それは 「アーカイブ的な運用ができる」 という意味であって、

「アーカイブシステムそのもの」ではありません。

  • 手軽さ
  • 運用のしやすさ
  • 発信力

を重視するなら、WordPressは非常に優秀です。

一方で、

  • 保存
  • 標準
  • 将来互換性

を重視するなら、AtoMやOmekaを検討すべきです。

大切なのは、

「今の規模」と「5年後の姿」を同時に考えること。

WordPressは“入口としての最適解”になることが多い。

その位置づけを理解したうえで使えば、

アーカイブ運用の強力な味方になります

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討している方はこちら
※現状の運用を前提にご相談を承ります

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。