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フォルダ構造の作り方|アーカイブで失敗しないための原則

アーカイブ運用において、もっとも軽視されがちで、しかしもっとも致命的になりやすいのが「フォルダ構造」です。

どれだけ高性能なアーカイブシステムを導入しても、どれだけ丁寧に作品情報を入力しても、元となるフォルダ構造が破綻していれば、運用は必ず崩れます。

実際、多くの現場では次のような声が聞かれます。

  • 「あの作品の画像、どこに入れたか分からない」
  • 「同じ作品の写真が3カ所にある」
  • 「展示が終わった後のデータ整理が追いつかない」

これらの原因は、ほぼ例外なくフォルダ構造の設計不足にあります。

フォルダ構造は単なる整理術ではありません。

それは アーカイブ全体を支える“見えないインフラ” です。

本記事では、

作家・ギャラリー・自治体・資料館、いずれの立場でも使える

「破綻しないフォルダ構造の原則」 を、考え方から具体例まで丁寧に解説します。


フォルダ構造がアーカイブ運用の生命線になる理由

フォルダ構造は、アーカイブの「使いやすさ」「引き継ぎやすさ」「長期運用の安定性」をすべて左右します。

ここを曖昧にしたまま進めると、必ず後戻りできない状態に陥ります。

フォルダは“人の記憶”を補完する装置

人は年月が経つと、必ず記憶を失います。

担当者が変わる、時間が空く、環境が変わる。

そのとき頼れるのは「構造化された情報」だけです。

フォルダ構造が論理的に組まれていれば、

「誰が見ても、だいたいここにありそうだ」と推測できます。

これはアーカイブにおいて非常に重要な要素です。

システム以前に“原データ”が整っているか

AtoMやOmeka、WordPressなどのシステムは、

あくまで「表示・検索・公開」のための器です。

しかし、その中に流し込む元データが

  • バラバラ
  • 命名が不統一
  • 同一作品が複数存在

という状態では、システム側で整理することはできません。

フォルダ構造は“最初に決めて、滅多に変えない”

フォルダ構造は、アーカイブの背骨です。

途中で頻繁に変えると、過去データとの整合性が取れなくなります。

だからこそ、

最初に時間をかけて設計し、その後は極力いじらない

という姿勢が重要になります。


作家・作品・展示の3層構造が基本

アートアーカイブにおいて、もっとも汎用性が高く、破綻しにくいのが

「作家 → 作品 → 展示」 を軸にした3層構造です。

なぜ3層構造が安定するのか

アートの情報は、必ずこの3つの要素を行き来します。

  • 誰が作ったか(作家)
  • 何を作ったか(作品)
  • どこで、どう見せたか(展示)

この関係性をフォルダ構造に反映させることで、

アーカイブ全体が“意味のある構造”になります。

作家単位でまとめるメリット

まず大枠として「作家」を置くことで、

複数作家を扱うギャラリーや自治体でも混乱が起きにくくなります。

作家が増えても、フォルダを一つ追加するだけで対応できます。

作品フォルダは“すべての起点”

作品フォルダには、以下のようなデータが集約されます。

  • 正面写真
  • 部分アップ
  • 設置写真
  • 作品情報(テキスト)

展示が増えても、作品自体は変わりません。

だからこそ、作品単位でデータを固定する ことが重要です。

展示は“派生情報”として扱う

展示は期間限定の出来事です。

そのため、展示フォルダは作品フォルダとは分離し、

「展示ごとの記録」として扱います。

これにより、同じ作品が複数展示に出ても、

情報の重複や混乱を防ぐことができます。


年度別構造と作品別構造の違い(混在NG)

フォルダ設計でよくある失敗が、

年度別構造と作品別構造を混在させること です。

年度別構造のメリットと限界

年度別構造は、事業報告や行政文書では有効です。

しかし作品管理においては、数年経つと次の問題が起こります。

  • 同じ作品が複数年に散らばる
  • 作品単位で情報を追えなくなる

作品別構造が向いている理由

作品は、制作年を超えて展示・販売・収蔵されます。

そのため、作品を軸に据えた構造 の方が長期運用に向いています。

年度は“属性情報”として持たせる

年度はフォルダではなく、

メタデータ(制作年/展示年)として管理します。

これにより、

  • 年度別の検索
  • 年表の生成

がシステム側で容易になります。

どうしても年度管理が必要な場合

どうしても年度単位の整理が必要な場合は、

「展示フォルダ」のみ年度別にするなど、役割を分けることが重要です。


フォルダ命名ルール(Date_Artist_Title)

フォルダ構造と同じくらい重要なのが「命名ルール」です。

命名が揺れると、検索性と視認性が一気に落ちます。

命名ルールは“人ではなく機械目線”

命名は、人間の感覚ではなく

検索・並び替え・自動処理 を意識して決めます。

基本フォーマットの考え方

推奨される基本形は以下です。

YYYY_ArtistName_Title

日付を先頭に置くことで、自然に時系列で並びます。

日本語・英数字の使い分け

日本語は可読性が高い反面、システムによっては文字化けの原因になります。

公開用・共有用を考えるなら、

英数字+ローマ字併用も検討します。

略称・愛称は使わない

作家本人にしか分からない略称は避けます。

第三者が見ても理解できる名称を使うことが原則です。


画像・動画ファイルの置き場所のルール化

画像や動画は、容量が大きく、増えやすいデータです。

ここを曖昧にすると、クラウド容量と管理コストが一気に膨らみます。

原本と公開用を必ず分ける

高解像度の原本データと、

Webや資料用の軽量データは、必ず分けて管理します。

ファイル種別ごとの整理

画像、動画、PDF、テキストは、

同じフォルダに混在させない方が後々楽になります。

動画は“別階層”で管理する

動画は容量が大きいため、

画像フォルダとは別階層に置くのが安全です。

バックアップを前提にした配置

フォルダ構造は、そのままバックアップ構造になります。

「丸ごとコピーできるか」を常に意識します。


クラウド運用での落とし穴と対策

クラウドは便利ですが、

設計を誤ると混乱を加速させる危険性もあります。

権限設定を曖昧にしない

誰が編集できて、誰が閲覧のみなのか。

これを最初に決めないと、フォルダが勝手に増殖します。

「とりあえず置く」フォルダを作らない

一時置き場は便利ですが、

恒久的に残るとゴミ溜めになります。

同期トラブルへの備え

複数端末で同期する場合、

重複ファイルが発生しやすいため、定期的な整理が必要です。

クラウドは“万能ではない”

クラウドは保存場所であって、

アーカイブそのものではありません。

役割を勘違いしないことが重要です。


まとめ:フォルダの設計=“管理コスト”の削減

フォルダ構造は地味な作業ですが、

アーカイブ運用の成否を決定づける要素です。

最初の設計が未来の自分を救う

今の自分ではなく、

数年後の自分、引き継ぐ誰かのために設計します。

シンプルさは最大の武器

複雑な構造ほど、運用コストは跳ね上がります。

「誰でも理解できる」ことが最優先です。

フォルダは“静かなルール”

一度決めたら、黙って従う。

それがアーカイブを長く安定させます。

フォルダ設計はアーカイブの第一歩

どんなシステムよりも先に、

まずフォルダを整えること。

それが、失敗しないアーカイブ構築の出発点です。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討している方はこちら
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この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。