アートイベントの企画運営・クリエイターグッズの販売

展示の記録を資産化するための写真・動画の撮り方

――「記録」で終わらせないためのギャラリー実務――

ギャラリーで行われる展示は、その期間が終われば空間としては消えてしまいます。しかし、そこで行われた展示の内容や構成、作家との関係性まで含めた「経験」は、本来ギャラリーにとって大きな資産です。

その資産を形として残す手段が、写真や動画による展示記録です。

ただし、単に「記念として撮る」だけでは、展示記録は資産になりません。

次の展示企画、作家への提案、顧客対応、メディア対応など、何度も使い回せる状態になって初めて資産化されたと言えます。

本記事では、ギャラリーが展示記録を“次に活きる情報”として残すために、どのような視点で写真・動画を撮影し、どう整理すべきかを実務ベースで解説します。

展示記録を“資産化”する視点とは?

展示記録を資産化するためには、「後から何に使うか」を意識した撮影と整理が欠かせません。単なる思い出写真ではなく、再利用を前提とした情報として扱う視点が重要です。

展示は一度きりだが、記録は何度も使える

展示そのものは会期が終われば消えますが、記録は残ります。記録が整理されていれば、過去の展示を参照しながら次の企画を立てたり、作家の展示履歴として活用したりできます。資産化とは、再利用可能な状態にすることです。

「誰が見ても分かる」状態を目指す

展示を知っている人だけが分かる記録では意味がありません。第三者が見ても、どのような展示だったのか理解できる写真・動画を残すことが、資産化の第一条件です。

主観的な感想ではなく客観情報を残す

感想や雰囲気だけでは、次に活かせません。空間構成、作品配置、サイズ感など、客観的な情報が写っているかを意識します。

「広報用」と「アーカイブ用」を分けて考える

SNS用の映える写真と、記録用の写真は役割が異なります。最初から分けて考えることで、取りこぼしを防げます。

写真撮影の基本(ギャラリー特有のポイント)

ギャラリー空間には、住宅や屋外とは異なる撮影上の難しさがあります。展示記録を資産にするためには、ギャラリー特有のポイントを押さえる必要があります。

壁面の反射をどう抑えるか

白壁や光沢のある壁面は、照明の反射が写り込みやすくなります。角度を少しずらす、偏光フィルターを使う、照明位置を調整するなどの工夫が必要です。反射が強い写真は、記録としての価値が下がります。

照明の色温度を揃える

展示空間では、スポットライトと全体照明の色温度が混在しがちです。写真にすると色味がバラつき、作品本来の色が分からなくなります。ホワイトバランスを固定する、撮影後に最小限の補正を行うなどの対応が重要です。

歪みを避けるための立ち位置

広角で撮ると空間は広く見えますが、作品が歪みます。展示記録では、歪みの少ない画角を優先します。作品と平行にカメラを構える意識が必要です。

人の写り込みは基本的に避ける

記録用写真では、鑑賞者の写り込みは避けます。空間と作品の関係性を正確に残すことが目的です。

展示風景写真の撮影リスト(全景〜個別)

何を撮り忘れたかは、後から気づいても取り戻せません。撮影リストを意識することで、展示記録の抜け漏れを防げます。

入口からの全景

ギャラリーに入った瞬間の視界は、展示全体の印象を左右します。この視点の写真は、展示構成を説明する際に非常に役立ちます。

壁面ごとの構成写真

各壁面を正面から撮影します。作品同士の関係性や配置意図を後から確認できます。

個別作品の設置状態

作品単体だけでなく、壁面に設置された状態を撮ります。サイズ感や空間との関係が分かることが重要です。

ディテール・キャプション

キャプションや細部の写真は、資料作成や問い合わせ対応で重宝します。

動画記録のメリット(動線・空間の理解)

写真だけでは伝わらない情報を補完するのが動画です。展示の空間性を理解するために有効です。

動線をそのまま残せる

来場者がどのように空間を移動するかは、写真では分かりません。動画は展示体験を再現できます。

空間スケールが伝わる

天井高や距離感は、動画の方が正確に伝わります。次回展示の参考資料として価値があります。

解説付き動画の活用

簡単な解説を入れることで、後から見返したときの理解度が高まります。

短くても良い

長編である必要はありません。1〜2分でも十分に記録価値があります。

撮影後に必要なデータ整理のルール

撮影後の整理が不十分だと、どれほど良い写真・動画でも資産になりません。

展示名・会期を必ず含める

ファイル名やフォルダ名に展示名と会期を含めます。これが検索の基準になります。

写真と動画を分けて整理

用途が異なるため、同じフォルダに混在させない方が管理しやすくなります。

用途別のサブフォルダ

アーカイブ用、広報用、SNS用など、用途別に分けることで誤使用を防げます。

更新日・担当者を記録

誰がいつ整理したかを残すことで、引き継ぎが楽になります。

SNSとアーカイブの使い分け(公開情報の選別)

すべてをSNSに出す必要はありません。役割を分けることが重要です。

SNSは入口、アーカイブは蓄積

SNSは関心を引く場、アーカイブは情報を残す場です。役割を混同しないことが重要です。

未公開資料はアーカイブに残す

展示構成資料や詳細写真は、必ずしも公開する必要はありません。内部資産として残します。

公開可否のルールを決める

作家との取り決めを含め、公開範囲を事前に決めておくとトラブルを防げます。

後から公開する選択肢を残す

今は出さない情報も、将来使える可能性があります。

まとめ:展示の記録は“次の展示”を作る

展示記録の価値は、会期後にこそ発揮されます。

過去展示が企画力を高める

記録を振り返ることで、成功点と改善点が明確になります。

作家との信頼関係を深める

きちんと記録を残すギャラリーは、作家からの信頼も得やすくなります。

ギャラリーの歴史が蓄積される

展示記録は、そのままギャラリーの価値になります。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討している方はこちら
※現状の運用を前提にご相談を承ります

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。