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AtoM/Omekaのメタデータ設計の基本(Dublin Core対応)

AtoMやOmekaを導入する際、多くの人が後回しにしてしまうのが「メタデータ設計」です。しかし結論から言えば、メタデータはシステム以上に重要です。なぜなら、どれだけ優れたシステムを導入しても、メタデータ設計が曖昧なままでは、検索できず、活用できず、引き継げないアーカイブになってしまうからです。

本記事では、AtoM・Omekaに共通するDublin Coreを軸に、後から直せない前提で考えるべきメタデータ設計の基本を、実務目線で丁寧に解説します。


メタデータ設計の重要性(後から直せない)

メタデータは「入力すれば終わりの項目」ではありません。むしろ、運用全体の質と寿命を決める設計図です。ここを誤ると、将来的な修正コストが一気に跳ね上がります。

なぜ後から直すのが難しいのか

メタデータは一度大量に入力が始まると、構造変更が非常に困難になります。項目名を変える、入力ルールを変えるといった修正は、すでに登録された数百・数千件のデータに影響します。結果として「分かっているけれど直せない」状態が生まれやすくなります。特にAtoMやOmekaのようなアーカイブシステムでは、CSVや内部構造に依存するため、安易な変更はデータ破損のリスクも伴います。

検索性・再利用性に直結する

メタデータ設計は、検索性と再利用性を左右します。タイトルや制作者名が統一されていなければ、検索結果は分断されます。また、展示ページ、図録、Web、外部連携などへの再利用も困難になります。メタデータは「将来、何に使うか分からない」ことを前提に、汎用性を持たせて設計する必要があります。

運用者が変わっても使えるか

アーカイブは長期運用が前提です。担当者が変わっても理解でき、同じルールで入力できる設計でなければなりません。属人的なルールや暗黙知に依存したメタデータは、必ず破綻します。設計段階で「第三者が見ても分かるか」を常に意識することが重要です。


Dublin Coreとは?(初心者向けに噛み砕く)

AtoMやOmekaを使うと、必ず目にするのがDublin Coreです。難しそうに見えますが、基本はとてもシンプルです。

Dublin Coreは“共通言語”

Dublin Coreは、世界中で使われているメタデータの共通規格です。Title(タイトル)、Creator(制作者)、Date(日付)など、15の基本要素で構成されています。この共通言語があることで、異なるシステム間でもデータの受け渡しが可能になります。AtoMとOmekaの両方が対応している理由もここにあります。

完璧に使いこなす必要はない

初心者が陥りがちなのが「全部正確に理解しなければならない」という思い込みです。実際には、すべての項目を使う必要はありません。重要なのは、自分たちのアーカイブに必要な項目を選び、意味を統一して使うことです。Dublin Coreは“枠組み”として捉えると理解しやすくなります。

なぜ独自項目を作りすぎてはいけないのか

Dublin Coreを無視して独自項目ばかり作ると、将来の移行や連携が難しくなります。まずは標準項目で表現できないかを検討し、それでも足りない場合にのみ独自項目を追加する。この順序を守ることが、長期的に見て安全です。


必須項目と任意項目の区別方法

すべての項目を必須にしてしまうと、入力が続きません。一方で、任意ばかりでも情報が揃いません。バランスが重要です。

必須項目は「検索の軸」

必須項目とは、検索や識別に不可欠な情報です。作品名、制作者、制作年、資料種別などが該当します。これらが欠けると、アーカイブとして成立しません。必須項目は最小限に絞り、確実に埋まる設計にします。

任意項目は“余力で育てる”

任意項目は、制作背景や補足情報など、あると価値が高まる情報です。最初から完璧を目指さず、運用に慣れてから徐々に充実させるのが現実的です。任意項目があることで、将来的な展示や研究に広がりが生まれます。

必須と任意は固定し続けない

運用が進むと、当初は任意だった項目が重要になることもあります。その場合は、段階的に必須へ昇格させる判断も必要です。メタデータ設計は一度決めたら終わりではなく、見直し前提で考えることが大切です。


作品アーカイブでよく使う項目一覧

ここでは、実務でよく使われる項目を整理します。AtoM・Omeka共通で考えられる内容です。

基本情報系(識別)

タイトル、制作者、制作年、資料種別は基本中の基本です。これらは検索・表示・識別の核になります。特にタイトルと制作者は表記揺れを防ぐルールが必須です。

物理情報系(サイズ・素材)

サイズ、素材、技法は、展示や貸出、保存管理に直結します。単位や表記方法を統一しておかないと、後から比較や集計ができなくなります。

管理情報系(所在・権利)

所在、管理番号、権利情報は内部管理で重要です。公開・非公開の切り分けを前提に設計し、閲覧者に見せる範囲を明確にします。


カテゴリ・タグ・語彙体系の設計方法

分類が曖昧だと、検索性が著しく低下します。ここでは整理の考え方を解説します。

カテゴリは“縦の構造”

カテゴリは階層構造で整理します。ジャンル、資料種別など、大きな枠組みを担当します。数は少なめに抑えるのがコツです。

タグは“横断検索”

タグは自由度が高い反面、増えすぎると破綻します。色、モチーフ、テーマなど、横断的に探したい軸に限定します。

語彙体系を決めておく

同じ意味の言葉が複数存在すると、検索性が下がります。あらかじめ使用語彙をリスト化し、表記を統一することで、データの質が安定します。


ギャラリー・自治体向け設計例(サンプル)

組織によって、必要な項目や重視点は異なります。代表的な例を見てみましょう。

ギャラリー向け設計

作品情報に加え、販売価格、委託状況、展示歴が重要です。顧客対応を想定し、検索しやすい構造が求められます。

自治体・資料館向け設計

来歴、地域性、関連資料が重要になります。研究・教育利用を見据え、説明性の高い項目設計が必要です。

共通して意識すべき点

どちらも「公開用」と「内部管理用」を分けて考えることが重要です。一つの項目に両方の役割を持たせない設計が安定します。


メタデータの“増やしすぎ問題”の解決法

便利そうだからと項目を増やすと、必ず運用が止まります。

使われない項目は負債になる

入力されない項目は、存在自体が混乱の元です。項目は少数精鋭が原則です。

項目追加は審査制にする

新しい項目を追加する際は、目的・利用場面・入力者を明確にします。これだけで無駄な増殖を防げます。

定期的な棚卸し

半年〜1年に一度、使われていない項目を見直します。削除や統合も運用の一部です。


まとめ:メタデータは“運用設計そのもの”

最後に、本記事の要点を整理します。

システムより設計が重要

AtoMやOmekaは道具に過ぎません。活きるかどうかはメタデータ設計次第です。

最初に時間をかける価値がある

設計にかけた時間は、将来の運用コストを大きく下げます。後戻りできないからこそ、最初が重要です。

運用を見据えた設計を

メタデータは入力のためではなく、使うためにあります。運用を想像しながら設計することが、成功するアーカイブへの近道です。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討している方はこちら
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この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。