アートイベントの企画運営・クリエイターグッズの販売

作品管理を始める前に知っておくべき5つの基本用語

アート・デジタルアーカイブは“用語の理解”から始めると圧倒的に楽になる。

アーカイブは専門的な印象がありますが、じつは基本用語さえ押さえておけば、

「何をどう整理すればいいか」が驚くほどクリアになります。

作家やギャラリー、資料館がアーカイブを難しく感じる理由の多くは、

・メタデータ

・分類

・標準規格

といった基礎概念を知らないまま“作業”だけ始めてしまうからです。

逆に言えば、最低限の用語を理解するだけで

作品管理はスムーズになり、迷いが減り、継続しやすくなります。

ここでは、アート・デジタルアーカイブの基盤となる5つの基本用語を、

初心者にも分かる形で丁寧に解説します。


用語①:メタデータ(アーカイブの心臓部)

アート・デジタルアーカイブの話題で必ず登場するのが「メタデータ」。

難しい言葉のように見えますが、実は非常にシンプルな概念です。


■ メタデータとは“データを説明するためのデータ”

作品であれば

  • タイトル
  • 制作年
  • サイズ
  • 技法
  • 所在
  • 撮影者
  • 価格履歴

など、作品そのものに付随する情報を指します。

メタデータがあることで、作品は

「ただの画像」から「意味を持つ記録」へと変化 します。


■ なぜメタデータが心臓部なのか?

理由は3つ。

① 検索できる

メタデータがあるからこそ「作品名」「テーマ」「サイズ」などで検索できます。

② 再利用できる

メタデータが整っていれば、

  • カタログ制作
  • 企画書作成
  • 展示のキャプション
  • SNS説明文

    すべてが簡単に作れます。

③ 保存できる

10年後に見返すとき、作品だけでは意味が伝わりません。

情報があって初めて作品は“未来に残る資料”になります。

メタデータなしのアーカイブは、図書館で本に背表紙がないのと同じ

“探せず”“読めず”“使えない”。

だからこそ「心臓部」と呼ばれるのです。


用語②:フォークソノミー(分類の自由度)

イントロダクション:

アーカイブや資料管理を始めると最初に迷うのが「分類」です。

そのとき役立つ概念が「フォークソノミー」。


■ フォークソノミー=ユーザーが自由に付ける分類(タグ)

図書館のように厳密な分類ではなく

利用者が好きにつけられるタグ付け方式 のことです。

例:

  • #青
  • #抽象
  • #猫
  • #習作
  • #個展2024

フォークソノミーは、

“厳密な分類”とは別に、自由度の高い分類を併存させる という考え方です。


■ なぜアートに向いているのか?

アート作品は多様で、固定の分類では整理しきれません。

例えば、

「抽象画だけど風景に見える。テーマは“光”で、シリーズは“水辺”」

そんな作品は無数にあります。

フォークソノミーを併用すれば

作者の感覚や連想で分類でき、閲覧者も見つけやすくなる のです。


用語③:Dublin Core(国際標準)

イントロダクション:

アーカイブの現場で“必ず”名前が挙がるのが Dublin Core(ダブリン・コア)。

これはアーカイブの“共通語”のような存在です。


■ Dublin Core=世界で最も使われているメタデータ標準

アート、図書館、博物館、大学など、あらゆる分野で使われます。

代表的な15項目のうち、作品アーカイブで特に重要なのは:

  • Title(タイトル)
  • Creator(作者)
  • Date(制作年)
  • Format(サイズ・素材)
  • Description(説明)
  • Rights(権利)
  • Identifier(ID)
  • Relation(展示・シリーズとの関連)

■ なぜ覚える必要があるのか?

Dublin Coreを使っておくと、将来どんなシステムでも互換性がある

からです。

  • AtoM
  • Omeka S
  • WordPressのアーカイブプラグイン
  • 資料館のアーカイブシステム

すべて“Dublin Coreベース”で動いています。

だから最初からDublin Coreに沿って記録しておくと、

後から移行するときに困らないのです。


用語④:コンテンツタイプ(作品・資料の分類)

イントロダクション:

アーカイブを作ると、写真、作品、文章、PDFなど多様なデータが混ざります。

そのとき必要なのが「コンテンツタイプ」という考え方です。


■ 結論:コンテンツタイプ=“データの種類”の定義

例:

  • 作品(Work)
  • 写真
  • 展示記録
  • 書類(PDF)
  • スケッチ
  • メモ
  • 動画

コンテンツタイプを分けると

“何をどう入力するか”の基準が整理されます。

作品にはサイズや技法が必要ですが、

展示記録には会期や場所が必要です。

同じ入力欄に混ぜてしまうと混乱します。

アーカイブが破綻する最大の原因は、

“全部を同じ扱いにすること” にあります。

だからコンテンツタイプの設計は必須です。


用語⑤:サムネイル・派生画像

イントロダクション:

アーカイブでは“画像の取り扱い”が非常に重要です。

その基本が「サムネイル」「派生画像」という概念です。


■ 結論:派生画像=1枚の元画像から作られる別形式の画像

一般的には:

① 原本(オリジナル)

  • フルサイズJPEG
  • TIFF(資料館では標準)

② 中サイズ

  • ウェブ閲覧用
  • SNS流用可

③ サムネイル

  • 一覧表示用
  • ファイルサイズが小さい

■ これを理解しないと何が起きるか?

よくある失敗:

  • 原本だけ大量に保存してクラウドが圧迫
  • サムネイルしか残していなくて

     印刷やカタログ制作で使えない
  • SNS用の低画質を“アーカイブ写真”として保存

アーカイブ運用の鉄則は

「原本+中サイズ+サムネイル」の3構造で持つこと。

これはAtoM・Omekaなどプロのアーカイブシステムも必ず採用しています。


基本用語を知るとなぜアーカイブが“楽になる”のか?

イントロダクション:

ここまで5つの基本用語を紹介しましたが、

この段階で“アーカイブが少し簡単に見えてきた”はずです。

なぜなら、アーカイブが難しいのは 用語が曖昧なまま整理を始めるせい だからです。


■ アーカイブが楽になる理由

① 作業の迷いが消える

「これは作品?資料?どこに入れる?」

という迷いがなくなります。

② 入力項目が最適化される

Dublin Coreを基準にすると、

必要以上に項目を増やして“自滅”しなくなります。

③ 失敗しない設計ができる

メタデータ・タグ(フォークソノミー)・派生画像

これらの概念があるだけで、

フォルダ構造やアプリ選択がスムーズになります。

④ システム移行が圧倒的に楽

WordPress → Omeka → AtoM

どれに移っても“軸が共通”なので崩れません。


初心者が最初に覚えるべき範囲のまとめ

イントロダクション:

アーカイブの世界は深く複雑ですが、初心者が理解すべき範囲はごく小さなものです。

大切なのは“全部覚えることではなく、最低限に絞ること”。


■ 覚えるべき5つの用語(最重要)

  1. メタデータ

     作品を説明する情報。心臓部。
  2. フォークソノミー

     自由なタグ付け。分類の補助。
  3. Dublin Core

     世界共通のメタデータ規格。
  4. コンテンツタイプ

     作品・資料などデータの“種類”。
  5. サムネイル・派生画像

     原本→中サイズ→小サイズの画像構造。

■ まずはこの範囲が理解できれば十分

この5つが理解できれば、

  • 作品整理
  • 写真の扱い
  • メタデータ入力
  • クラウドでの構造設計
  • AtoM・Omeka・WordPress選び

すべてに一貫した軸が生まれます。

アーカイブは“知識が作業を軽くする世界”です。

用語の理解は、その第一歩になります。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から整理したい方はこちら
※現状の運用を前提にご相談を承ります

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。