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AtoMを導入するときに必要なサーバー・技術要件

―― 本格アーカイブは「土台」で9割決まる

AtoM(Access to Memory)は、国際標準に準拠した本格的なアーカイブシステムとして、世界中の公文書館・資料館・大学・自治体で利用されています。一方で、「インストールが難しい」「サーバー要件が厳しい」といった印象を持たれることも少なくありません。

しかし実際には、AtoMが“難しい”のではなく、最初のサーバー設計や技術要件を軽視した導入が失敗を招いているケースがほとんどです。

AtoMは「簡単に始めるCMS」ではなく、「長期保存を前提とした情報基盤」であり、その思想に合った環境を用意することが不可欠です。

この記事では、AtoM導入時に必ず押さえておくべきサーバー要件・技術的前提・構成判断のポイントを、非エンジニアでも理解できるレベルで整理します。


AtoMのサーバー要件まとめ(最新版)

AtoMは単なるWebアプリケーションではなく、「検索エンジン」「メタデータ管理」「画像配信」を組み合わせた複合システムです。そのため、一般的なWordPressよりも明確なサーバー要件が定められています。まずは、AtoMが前提としている技術スタックを理解することが重要です。

OS:Linux系が前提となる理由

AtoMは公式に Linux環境(Ubuntu LTSなど) を前提として設計されています。Windows Serverでの運用は非推奨で、トラブル時の情報もほぼ存在しません。

特に自治体や資料館では「長期保守」を考える必要があるため、サポート期間の長い Ubuntu LTS(20.04 / 22.04) を選ぶのが現実的です。

PHP:バージョン依存に注意する

AtoMはPHPベースのアプリケーションですが、対応バージョンが比較的シビアです。

新しすぎるPHPでは動作しないことがあり、公式ドキュメントで指定されたバージョンに合わせることが必須になります。

「とりあえず最新のPHPを入れる」という判断は、AtoMでは失敗の元です。

Elasticsearch:AtoMの“心臓部”

AtoM最大の特徴であり、同時に最も重要なのが Elasticsearch です。

AtoMの高速検索・階層構造の横断検索は、すべてElasticsearchによって支えられています。

Elasticsearchが正しく動作しない場合、

  • 検索が極端に遅くなる
  • 結果が正しく表示されない
  • 管理画面が不安定になる

といった問題が発生します。AtoM導入=Elasticsearch導入と考えて差し支えありません。

メモリ要件:最低ラインを誤解しない

AtoMはメモリを比較的多く消費します。

公式には「最低2GB」と書かれていることもありますが、実運用では最低4GB、できれば8GB以上が推奨されます。

特に、検索インデックスの再構築や大量データ投入時には、メモリ不足が即トラブルに直結します。


クラウドにするかオンプレにするか?比較

AtoM導入時に必ず議論になるのが、「クラウドに置くべきか」「庁舎内サーバー(オンプレミス)にするべきか」という点です。これは技術の問題だけでなく、運用体制・予算・リスク管理にも深く関わります。

クラウドのメリットと注意点

クラウド(VPS・IaaS)の最大のメリットは、初期構築の柔軟性と拡張性です。

資料数が増えた際にスペックを上げやすく、バックアップや障害対応も比較的容易です。

一方で、自治体の場合は「クラウド利用ポリシー」「データの所在」に関する内部規定を必ず確認する必要があります。

オンプレミスの安心感と現実的な課題

オンプレミスは「自分たちの施設内にデータがある」という安心感がありますが、実際には

  • ハードウェア更新
  • 障害時対応
  • 担当者不在時のリスク

といった運用負荷が非常に大きくなります。

小規模自治体・資料館では、オンプレはおすすめしにくいのが現実です。

ハイブリッド構成という選択肢

一部の成功事例では、

  • 原本データ:庁内保管
  • 公開・検索用:クラウド

というハイブリッド構成を採用しています。

情報公開と保存の役割を分けることで、AtoMの強みを最大限に活かすことができます。


推奨スペック(資料数10,000件以上の場合)

AtoMは資料数が増えるほど真価を発揮しますが、その分サーバーへの要求も高まります。ここでは、資料数10,000件以上を想定した現実的な推奨スペックを紹介します。

CPUとメモリのバランス

CPUは高クロックよりもコア数が重要になります。

4コア以上、メモリ8GB以上を確保することで、検索・管理画面のレスポンスが安定します。

ストレージ設計の考え方

画像・PDF・動画を扱う場合、ストレージは急速に増加します。

最低でも SSD 200GB以上 を想定し、将来的な拡張余地を残す設計が必要です。

バックアップを含めた容量計算

AtoMでは「本体データ+検索インデックス+バックアップ」が必要になります。

実際に必要な容量は、想定の 1.5〜2倍 と考えておくのが安全です。


専門業者に依頼する際のチェックポイント

AtoM導入を外注する場合、「サーバーを立てられる業者」と「AtoMを理解している業者」は別物である点に注意が必要です。

AtoM実績の有無を必ず確認する

過去にAtoM導入実績があるかどうかは最重要項目です。

Elasticsearchやインデックス構造を理解していない業者は、後々トラブルを残します。

アップデート・保守を含めた契約か

AtoMは定期的なアップデートが前提です。

初期構築だけでなく、「その後の保守」を含めた契約かどうかを必ず確認しましょう。

属人化を防ぐドキュメント提供

構成図・設定内容・バックアップ手順などのドキュメントが残らない導入は、将来的なリスクになります。

「引き継げる形」での納品が重要です。


AtoMの技術的な注意点(アップデート・保守)

AtoMは一度入れたら終わりではありません。

長期保存を目的とする以上、継続的な保守が前提になります。

安易なアップデートは危険

PHPやElasticsearchを不用意にアップデートすると、AtoMが動かなくなるケースがあります。

必ずテスト環境で検証してから本番反映する運用が必要です。

検索インデックスの再構築タイミング

大量データ投入後や項目変更後は、インデックス再構築が必要になります。

この作業を知らずに放置すると、「検索できないアーカイブ」になってしまいます。

担当者交代を前提にする

自治体・資料館では担当者交代が避けられません。

運用手順を文書化し、「人が変わっても回る設計」にしておくことが重要です。


まとめ:AtoM導入は“基盤設計”が成否を決める

AtoMは、

  • 本格的
  • 国際標準
  • 長期保存向き

という強力な特徴を持つ一方で、適当なサーバー設計では確実に失敗するシステムでもあります。

だからこそ重要なのは、

  • 最初に要件を正しく理解する
  • 保存と公開の役割を整理する
  • 無理のないスペックと体制を組む

という「基盤設計」の段階です。

AtoMは“難しいシステム”ではありません。

「本気で残す覚悟がある組織」に応えてくれるシステムなのです。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討している方はこちら
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この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。