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外注すべきか?自分で作るべきか?費用対効果で判断する方法

アート・デジタルアーカイブを作ろうとしたとき、

最初に悩むのが 「外注するべきか?自分で作るべきか?」 という判断です。

外注すればプロ品質のアーカイブが手に入りますが費用がかかります。

自作すれば費用は抑えられますが、時間や技術の負担が生じます。

重要なのは、

「どちらが得か?」ではなく「どちらが“自分の時間価値”に合うか?」

です。

このコラムでは、外注と自作の本質的な違い、メリット・デメリット、費用対効果の考え方、

そして作家・ギャラリー・自治体のケース別判断まで詳しく解説します。


外注 vs 自作の比較(結論:時間があるかで決まる)

外注の良さは“質とスピード”、自作の良さは“自由とコストゼロ”。

しかし最終的に最も重要なのは「時間があるかどうか」です。

アーカイブは“作った後の運用”が本番であり、そのためには継続時間を確保する必要があります。


結論として、判断基準は次の1点に集約されます。


■ 「アーカイブを作る時間が確保できるか?」

  • 時間がある → 自作
  • 時間がない → 外注

アーカイブは単なるデータベースではなく、

作品・資料を未来に残すための長期プロジェクト です。

したがって、

「どちらが安いか」よりも、

「どちらが継続可能か」を基準にするほうが失敗しません。


外注のメリット・デメリット

外注は費用こそ発生しますが、プロが入ることで“最初のつまずき”を回避できる大きな利点があります。特にアーカイブの基礎設計(命名・分類・メタデータ設計)はプロ品質が後々の運用を左右するため、外注の価値は実は非常に高い領域です。


■ 外注のメリット

  1. 初期設計が正しく整う(分類・メタデータ)

     → 素人が最も失敗する部分をプロが担当
  2. スピードが早い

     → 数か月かかる作業が数週間で完成
  3. 写真撮影・データ整理の品質が高い
  4. 導入システム(AtoM・Omeka・WordPress)の構築が確実
  5. 運用マニュアルまで整う

アーカイブの“土台”を作る部分は外注する価値が非常に大きいです。


■ 外注のデメリット

  1. 費用がかかる(個人3〜20万/ギャラリー10〜80万)
  2. 方向性のすり合わせが必要
  3. 途中で仕様変更するとコスト増
  4. 外注後の運用は自力で行う必要がある

特に、「全部丸投げ」は不可能です。

アーカイブは運用が本体なので、最終的には自分で触る必要があります。


自作のメリット・デメリット

自作はコストを最小限にできる反面、“経験不足による構造の破綻”が最も起きやすい選択肢です。よくあるのが「最初はきれいにまとめていたのに、半年でぐちゃぐちゃになる」というケース。その原因は、正しい設計を知らずに始めてしまう点にあります。


■ 自作のメリット

  1. コストが最小(実質0円)
  2. 設計思想を自分で理解した状態で作れる
  3. 柔軟に方針を変えられる
  4. 作品理解が深まる(特に作家)

コストを抑えたい作家や小規模ギャラリーには大きな利点です。


■ 自作のデメリット

  1. 分類・命名・メタデータの設計ミスが起きやすい
  2. 途中で構造整理できなくなる
  3. 時間が膨大にかかる(100点で10〜30時間)
  4. SNS感覚の整理になると破綻しやすい
  5. AtoM/Omekaへの移行が困難になる

アーカイブの「質」は、最初の設計で決まります。

自作の最大リスクは、この設計が自己流になることです。


費用対効果の計算方法(コスト/時間/成果)

外注判断で最も重要なのは、“費用の大小”ではなく“時間の価値”です。

ここでは、外注と自作を比較するための「定量的な評価方法」を提示します。


■ ① 時間の価値を金額に変換する

時給を仮に 2,000円 とします。

(作家・ギャラリーの経営者としては妥当な計算です)

アーカイブ100点の整理時間を20時間とすると、

20時間 × 2,000円 = 40,000円

つまり、自作には最低でも 4万円分の時間コスト が発生します。


■ ② 外注費と比較する

仮に外注費が10万円なら、

自作(4万円相当)との差額は6万円。

  • この6万円を払ってでも時短したいのか?
  • 6万円で20〜30時間浮くなら、その時間で何ができるか?

これが費用対効果の基本計算です。


■ ③ 成果の質を考慮する

アーカイブの質は、作品保全・取引・展示の基盤になります。

質の高さ

= 長期でのリターン につながるため、

最終成果物の価値も比較に入れる必要があります。


ケース別おすすめ判断(作家/ギャラリー/自治体)

同じアーカイブでも、作家・ギャラリー・自治体では「求める精度」「使う時間」「資料量」がまったく異なります。そのため、“最適な判断基準”も変わります。


■ 個人作家の場合

基本:自作+必要部分だけ外注が最適

  • 写真撮影を外注
  • フォルダ整理は自作
  • 命名・分類ルールだけ外注
  • AtoM/Omeka導入は外注
  • 情報入力は自作

→ コストを抑えつつ、質を落とさず進められる。


■ ギャラリーの場合

基本:初期設計は外注した方が良い

ギャラリーは

  • 作品点数が多い
  • 複数作家を扱う
  • 展示記録が複雑

    ため、分類体系の設計が難易度高め。

初期設計を外注し、入力はスタッフで対応するのが最も安定します。


■ 自治体・資料館の場合

外注が必須レベル

理由:

  • 資料数が膨大
  • 権利関係が複雑
  • 長期保全が必須
  • 国際標準が求められる
  • AtoM導入は技術的に高度

自治体アーカイブに“完全自作”はほぼ不可能です。


外注+自作の“ハイブリッド”が最強な理由

アーカイブ業務の本質は「継続」です。外注か自作かを二択で考えると失敗しやすく、実際に成功しているアーカイブはすべて“ハイブリッド型”で運用されています。


ハイブリッドが強い理由:

■ ① 初期の設計だけ外注する

分類・命名・メタデータという最難関部分だけプロに任せる。

■ ② 入力は自力(またはスタッフ)で継続

運用コストを抑えつつ、継続性を担保。

■ ③ 必要なときだけ修正を外注

  • 新館オープン
  • 展示リニューアル
  • システム変更

こうしたタイミングでプロの手を借りる。


結果として、

  • 初期品質は高い
  • 維持コストは削減
  • トラブルも少ない
  • 長期運用が安定

という“最も再現性の高いアーカイブ運用”が実現します。


まとめ:外注判断は“作業時間の価値”で決まる

アーカイブは、作るだけなら誰でもできます。

本当に価値が生まれるのは、完成後に“10年続けられる構造”を持っているかどうか。

そのためには、自分の時間とお金をどう配分するかが重要です。


外注と自作は、

「どちらが安いか」ではなく「どちらが継続に向いているか」 で決めるべきです。

  • 時間がある → 自作
  • 時間がない → 外注
  • 最強 → ハイブリッド(設計だけ外注/運用は自作)

アーカイブは、未来に作品・資料を残すための基盤です。

財産を守るための“長期的な投資”として、最も合理的な判断を行いましょう。

■ 外注 vs 自作 チェックリスト

◆ 結論がすぐ出る“15問チェック”

当てはまる数で判断できます。


【A:自作に向いているチェック(YES=1点)】

  1. アーカイブに使える時間が 週5時間以上 ある
  2. 作品点数(または資料点数)が 100点以内
  3. 自分でデータ整理やPC操作が得意
  4. フォルダ整理や命名ルールを自分で設計できる
  5. 将来、AtoMやOmeka Sに移行する気がある
  6. “まず形だけでも作りたい”という段階である
  7. 外注費をできれば抑えたい
  8. 写真撮影は自分でコントロールしたい

Aが6点以上なら「自作向き」


【B:外注に向いているチェック(YES=1点)】

  1. 作品・資料点数が 300点以上
  2. 同じ作業を繰り返すのが苦手
  3. フォルダ名や分類ルールを考えるのが苦痛
  4. 作品・資料の整理が後回しになりがち
  5. スタッフ間で情報が共有できていない
  6. 写真の質を一定レベルに保ちたい
  7. AtoM/Omeka/WordPressに不安がある
  8. “最初にプロ品質の土台を作りたい”
  9. 作家・ギャラリー・自治体など関係者が多い
  10. 展示記録を正確に保管したい

Bが6点以上なら「外注向き」


【C:ハイブリッドに向いているチェック(YES=1点)】

  1. 予算は限られているが、基礎設計だけは任せたい
  2. 命名ルールや分類設計だけプロに依頼したい
  3. データ入力は自分/スタッフで継続したい
  4. 展示や資料の更新は頻繁にある
  5. 長期運用できる仕組みを作りたい
  6. 定期的に見直ししたい

Cが4点以上なら「ハイブリッド運用」がおすすめ


◆ 総合判定(まとめ)

A(自作)B(外注)C(ハイブリッド)判定
Aが最多自作でOK
Bが最多外注すべき
Cが最多A・B混在ハイブリッドが最適

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討されたい方はこちら
※現状の運用を前提にご相談を承ります

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。