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アーカイブ外注でよくある見積もり項目と費用内訳

アーカイブ構築を外注するとき、最も誤解されやすいのが「費用の根拠」です。

たとえば見積もりが20万円なのか、60万円なのか、あるいは100万円になるのか——

その理由がわからなければ、比較も判断もできません。

結論として、アーカイブの見積もりは “作業工程”と“項目数”で決まる ため、

費用を把握するには「項目ごとの作業量」を理解するのがもっとも合理的です。

この記事では、アーカイブ外注で一般的に登場する見積もり項目をすべて解説し、

どこにコストがかかっていて、何を比較すべきかが明確になるよう整理します。


見積もりは“項目で比較”すべき理由

外注費を比較するとき、多くの人が「金額だけ」で判断しようとします。

しかし、アーカイブ業務はプロジェクトごとに作業数がまるで違うため、

金額だけでは比較できない という構造的な特徴があります。

■ なぜ項目比較が必要なのか?

理由は3つあります。

  1. 整理すべき作品点数が違う

    (例:30点と300点では作業工数が10倍以上変わる)
  2. システムの種類で作業が変わる

    (例:WordPress と AtoM では入力作業量も設定作業量も異なる)
  3. 写真の有無・品質で作業時間が変動する

    (撮影済みか?補正が必要か?RAW データはあるか?)

そのため、

「A 社は 30 万円、B 社は 50 万円」

と金額で比較してしまうと、裏側の工程まで見えません。

項目ごとの内訳が明確な見積もりだけが、正しく比較できる見積もりです。


主要項目①:データ整理(写真/作品情報)

外注費の中で最も時間を食うのが、この「データ整理」です。

■ データ整理の作業内容とは?

  • 作品写真の選定(複数候補がある場合)
  • ファイル名の統一
  • サイズ・技法・制作年などの作品情報の入力
  • タイトル・シリーズ名の修正
  • Excel/CSV の整備(フォーマット揃え)

■ 費用相場

3万〜20万円(点数・情報量で変動)

作品点数作業量相場
〜30点軽作業3万〜5万円
100点中量8万〜15万円
300点以上重量級20万円〜

特に 「点数が多い作家」や「資料が混乱しているギャラリー」 では、

この整理工程が最も大きなコストになります。


主要項目②:作品撮影(枚数で変動)

次に費用を左右するのが「作品撮影」です。

撮影の有無で見積もりが一気に変わります。

■ 撮影が必要になるケース

  • 写真がない
  • SNS 用の画像しかない
  • 反射が強い/ゆがみがひどい
  • 額や展示写真がない
  • 立体作品なのに正面しか写っていない

■ 撮影費の目安

作品点数 × 撮影単価 で計算されることが多い

作品タイプ単価相場
平面作品(1点)1,500〜4,000円
立体作品(1点)2,500〜6,000円
テキスタイル(1点)2,000〜5,000円
展示全景・会場撮影10,000〜25,000円

撮影が入るだけで、見積もりは 10万〜50万円 ほど上振れします。

逆に言えば、

“撮影を自分で行う”と費用が大きく下がります。


主要項目③:システム構築(AtoM・Omeka・WP)

最もブレ幅が大きいのが「どのシステムを使うか」。

■ 代表的な3つの構築費

システム特徴相場
WordPress表示が柔軟・簡易データベース向き5万〜30万円
Omeka S公開向け・学術展示向け15万〜60万円
AtoM大規模資料向け・階層構造20万〜100万円

■ なぜこんなに差が出るのか?

  • メタデータの種類
  • 階層化の有無
  • プラグイン導入
  • サーバー要件
  • カスタマイズ量
  • 公開ページのデザイン
  • API 連携の有無

特に AtoM は「国際標準に準拠した構造」を持つため、

項目設定と階層構造の設計に時間がかかり、費用が高くなりがち です。


主要項目④:ヒアリング・プロジェクト管理費

あまり知られていませんが、

アーカイブの外注費で必ず発生するのが「プロジェクト管理」です。

■ 具体的な作業

  • ヒアリング(用途・項目・対象範囲の確認)
  • 企画書/構築プランの作成
  • タスク管理
  • 納品データの形式確認
  • 修正指示への対応
  • 進行共有

これらは表には出ませんが、

実際にはかなりの時間と専門性を必要とします。

■ 相場

全体費用の 10〜30% が一般的

例:50万円のプロジェクトなら 5〜15万円ほど。


見積もりに入っていない“隠れコスト”の注意点

見積もりには書かれないが、実際に発生するコストがあります。

これを知らないと「思ったより高くついた」という事態になります。

■ よくある隠れコスト

① データ渡し用の整理

クライアント側でフォルダ整理が必要になる。

② 追加撮影

「撮影漏れ」があると、追加費用が原則発生。

③ 入力項目の追加

いざ運用すると

「やっぱり展示歴の項目を追加したい」

といったニーズが出てくる。

④ サーバー費

AtoM:月 2,000〜10,000円

Omeka S:月 1,000〜5,000円

WP:月 500〜3,000円

⑤ データ移行

旧データ/古いExcelを整える作業は、想像以上の時間がかかります。

⑥ 担当者の教育コスト

運用担当者を育てないと結局回らないため、

操作説明会を別料金にしている業者も多い です。


まとめ:内訳を知ることで相場観が身につく

アーカイブ外注費は、

「高い・安い」という感覚だけでは判断できません。

判断するためには、

“どの工程にどれだけの作業があるか” を理解する必要があります。

そのために、

  • データ整理
  • 撮影
  • システム構築
  • プロジェクト管理

    という 4 つの主要項目に分けて比較することが重要です。

内訳を理解すれば、

・自分でできるところ

・外注に任せるところ

が明確になり、結果的に最適な費用でアーカイブを構築できます。

✔「外注費用の早見表」

(規模別・項目別に速攻で判断できる相場表)

アート・デジタルアーカイブの費用は、

①点数

②写真の有無

③使用システム(AtoM・Omeka・WP)

の3要素で決まります。

以下は見積もりを受け取ったときの“比較基準”として使える表です。


■ ① 個人作家向けの早見表(3〜20万円)

依頼内容相場備考
作品写真の整理(100点まで)2万〜6万円作品名・サイズ整理など
作品撮影(1点)1,000〜4,000円立体は高め
作品撮影(1日プラン)3万〜8万円100点前後可能
作品データベースの初期設計3万〜10万円Notion/スプレシで構築
Web公開(WordPress)5万〜20万円テンプレート利用で安価に

個人作家は“データ整理+基礎設計”だけ外注するのが最も費用対効果が高い。


■ ② ギャラリーの早見表(10万〜80万円)

依頼内容相場備考
作品情報の整理(300点まで)8万〜25万円作家別フォーマット作成
出品リスト/販売管理の統合5万〜15万円在庫・返却管理も含む
展示写真の整理(1展示)2万〜6万円記録化の標準化を含む
システム構築(WordPress)15万〜50万円公開用に最適
システム構築(Omeka S)20万〜80万円カスタムで変動

ギャラリーは“委託作品管理+展示記録の標準化”が最大の外注効果ポイント。


■ ③ 自治体・資料館(50万〜300万円)

依頼内容相場備考
資料整理(500〜5000点)30万〜150万円現物整理/撮影含む
スキャン(1点)150〜600円A4以下の資料
AtoM構築80万〜250万円階層型アーカイブに強い
Omeka S構築60万〜200万円展示型サイトに最適
データ移行(既存CMS→AtoM等)20万〜100万円点数次第で大幅変動

自治体は“長期運用体制”が最も重要で、導入後の保守費も見逃せない。


■ ④ “項目別見積もり”の早見表(外注する場合の基準)

項目小規模中規模大規模
データ整理3万〜10万10万〜30万30万〜100万
写真撮影3万〜10万10万〜30万30万〜100万
システム構築5万〜20万20万〜60万60万〜250万
プロジェクト管理費1万〜5万5万〜15万15万〜40万
データ移行5万〜30万30万〜100万

※ 大規模は自治体・資料館級を想定

※ システムにAtoMを選ぶと全体費用が1.3〜1.6倍になりやすい


■ ⑤ “外注費が高くなるケース”のチェック表

(早見表とセットで使える)

  • 点数が多い(300点以上)
  • 写真がバラバラ(重複・不鮮明・フォルダ散乱)
  • 展示歴・販売履歴が未整理
  • システムのカスタマイズを多く求める
  • 権利処理(利用許諾)が未確定
  • 複数部署で運用する
  • 公開サイトのデザイン要件が高い

こうした条件が重なると、費用は 一般相場の1.5〜3倍 になりやすい。


■ まとめ:

外注費を理解することで“高い・安い”の判断ができる

アーカイブの見積もりは、

総額を見るのではなく「項目で比較」することが唯一の正解 です。

  • データ整理
  • 撮影
  • システム構築
  • プロジェクト管理
  • 隠れコスト

この5つのどこにお金がかかっているかを理解すると、

他社見積もりの比較も、外注すべき範囲の判断も、圧倒的にしやすくなります。


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この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。