複数作家の情報管理を効率化するアーカイブ術
展示会記録の標準化マニュアル|写真・出品リストの整え方
――標準化が“ギャラリーの信用”を支える
ギャラリー運営において、アーティスト情報の管理は「地味だが最重要」な業務です。
展示企画、作品販売、顧客対応、メディア取材、将来的な再評価——そのすべては、正確で整理されたアーティスト情報を前提に成り立っています。
にもかかわらず、多くのギャラリーでは、
といった問題が慢性的に起きています。
これは個々の作家や担当者の問題ではありません。
情報を「データとして扱う設計」がなされていないことが原因です。
この記事では、ギャラリーがアーティスト情報をデータ化する際に必ず押さえるべき
10の失敗回避ポイントを、実務に即した形で解説します。
アーティスト情報のデータ化で最初に直面するのが、「情報はあるのに使えない」という状態です。
これはデータ不足ではなく、不統一が原因で起こります。
ある作家はPDF、ある作家はWord、別の作家はメール本文のみ。
こうした状態では、検索・比較・再利用ができません。
データ化とは「保存」ではなく「同じ形式に揃える」ことです。
担当者Aは年表形式、担当者Bは文章形式。
この差が蓄積すると、引き継ぎのたびに情報が失われます。
個人のやり方ではなく、ギャラリーとしての型が必要です。
古い住所、旧姓、使われなくなった肩書き。
「一度登録したら終わり」という意識が、情報の信頼性を下げます。
プロフィールと作品データが別管理だと、
「この展示のこの作品は誰のどの時期のものか」が即答できません。
データ化の第一歩は、「何を書くか」を固定することです。
自由に書かせると、必ず比較不能になります。
名前、生年、拠点、略歴、ステートメント。
まずはこの5項目を必須にします。
略歴は400字以内、ステートメントは600字以内など、
文字数の目安を設けることで情報密度が揃います。
西暦/和暦、全角/半角、敬称の有無。
細部ですが、ここを揃えないとデータとして扱えません。
「年1回見直す」「展示前に必ず確認する」など、
更新タイミングをルール化します。
作品情報の揺れは、そのままギャラリーの信用低下につながります。
「F10」「530×455mm」「キャンバス・油彩」など、
どれか一つに統一し、別表記は補足に回します。
無題作品の表記方法、英題の有無などをルール化します。
番号がない作品は、管理できません。
作品番号はデータ連携の要です。
公開価格と内部管理価格を分け、混在させないことが重要です。
展示歴は、アーティスト評価の根拠資料です。
形式が揃っていないと価値が伝わりません。
逆順・昇順を混在させないことが重要です。
展示の性質を明記しないと、実績の重みが誤解されます。
「東京」「大阪」などの地域情報は後の分析に役立ちます。
作家任せにせず、ギャラリー側で最終調整を行います。
データが増えるほど、フォルダ構造は重要になります。
作家名/プロフィール/作品/展示記録、という基本構造を固定します。
どちらかに統一し、混在させないことが肝心です。
一時ファイルが混ざると、正しいデータが分からなくなります。
ファイル名は検索性と安全性を左右します。
タイトル変更があっても、番号は不変です。
YYYYMMDD形式が最もトラブルが少なくなります。
システム連携を考え、英数字推奨とします。
ここからは、見落とされがちだが致命的になりやすいポイントです。
最低でも月1回、別媒体に保存します。
「クラウドがあるから安心」は危険です。
顧客情報・価格情報は必ず非公開管理にします。
暗い・歪んだ写真は、そのまま作品評価を下げます。
最終公開前に必ず作家確認を取り、誤記を防ぎます。
メールアドレスや電話番号の更新漏れは致命的です。
アーティスト情報のデータ化は、単なる事務作業ではありません。
整理されたデータは、ギャラリーの信頼そのものです。
担当者が変わっても運営が続く仕組みになります。
記録が整っている作家ほど、再評価されやすくなります。
ギャラリーと作家、双方にとっての資産です。
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