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自治体アーカイブの運用体制|担当者がやるべき仕事とは?

自治体がアーカイブ事業に取り組む際、システム選定やデジタル化作業に注目が集まりがちですが、実際の成否を分けるのは「運用体制」です。

どれだけ優れたシステムを導入しても、日々の運用が回らなければ、数年後には更新されないデータと使われない仕組みが残るだけになります。

特に自治体の場合、異動や人事ローテーションが前提となるため、「誰かが頑張る」体制では必ず破綻します。必要なのは、担当者が変わっても回り続ける仕事の設計です。

本記事では、自治体アーカイブを安定して継続させるために、

担当者・管理職・外部協力者がそれぞれ何を担うべきか、

そして担当者自身が日常的に行うべき具体的な仕事を、運用目線で整理します。


運用体制がなぜ最重要なのか?(成功率が決まる)

自治体アーカイブは「作る」よりも「続ける」方が難しい事業です。その分かれ道が運用体制です。

システムは放っておくと必ず劣化する

アーカイブシステムは、導入した瞬間が完成ではありません。データが更新されず、ルールが曖昧になれば、検索性も信頼性も低下します。運用体制がなければ、どんなシステムも数年で使われない箱になります。

自治体特有の人事異動リスク

担当者が数年で変わることを前提にしない運用は、必ず引き継ぎで止まります。「この人しか分からない」を作らないためには、役割と手順を明文化した体制が必要です。

文化事業は後回しにされやすい

繁忙期や突発業務が発生すると、アーカイブは後回しにされがちです。だからこそ、日常業務に組み込まれた運用設計が重要になります。

体制は“意思表示”でもある

運用体制を整えることは、「この事業を続ける」という組織としての意思表示です。これがない事業は、予算や人員も守られません。


役割分担(担当者・外部協力者・管理職)

自治体アーカイブは、担当者一人で完結する事業ではありません。役割分担の明確化が前提です。

担当者の役割:日常運用の中核

担当者は、データ入力、チェック、問い合わせ対応など、日々の実務を担います。重要なのは「全部を完璧にやる」ことではなく、回し続けることです。

外部協力者の役割:専門領域の補完

撮影、スキャン、システム保守、設計支援など、専門性が必要な部分は外部に任せます。外注は丸投げではなく、役割を限定することで効果を発揮します。

管理職の役割:判断と後ろ盾

管理職は細かい作業をする必要はありませんが、運用方針の承認や優先順位の調整を担います。これがないと、担当者は孤立します。

三者の関係性を図で共有する

役割分担は文章だけでなく、簡単な図で共有すると理解が進みます。曖昧な関係性は、責任の押し付け合いを生みます。


年度計画の作成方法(目標と指標)

年度計画は、アーカイブを「事業」として成立させるための背骨です。

数値目標は現実的に設定する

年間登録件数や公開件数は、無理のない数字にします。高すぎる目標は、途中で誰も見なくなります。

「やらないこと」を決める

すべてを一度にやろうとすると失敗します。今年は何をやらないかを決めることが、計画の質を高めます。

定性目標も必ず入れる

「問い合わせ対応が楽になる」「庁内共有が進む」など、数字にしにくい効果も明文化します。これが評価の材料になります。

年度末レビューを前提にする

最初から振り返りの場を予定に入れることで、計画が形骸化しにくくなります。


データ入力・チェックのルール

データ入力は、アーカイブ運用の中で最も地味で、最も重要な作業です。

入力ルールは最小限にする

細かすぎるルールは守られません。必須項目と表記統一だけに絞ることが継続のコツです。

チェック工程を必ず分ける

入力とチェックを同一人物が行うとミスに気づきにくくなります。簡易でもよいので、別の目で確認する工程を作ります。

未完成データを許容する

完璧を求めすぎると入力が止まります。「後で補完できる」前提で進める方が運用は安定します。

更新日を必ず記録する

いつ誰が更新したかが分かるだけで、データの信頼性は大きく変わります。


権限管理と情報公開ガイドライン

自治体アーカイブでは、「誰が見られるか」が非常に重要です。

閲覧・編集権限を分ける

全員が編集できる状態は危険です。最低限、閲覧専用と編集権限は分けます。

公開・非公開の基準を明文化する

なぜ公開しないのかを説明できる基準が必要です。担当者判断に任せると迷いが生じます。

個人情報の扱いを明確にする

作家・寄贈者・関係者の個人情報は、原則非公開とし、アクセス制限をかけます。

問い合わせ対応のフローを作る

公開情報と非公開情報をどう切り分けて回答するか、事前に決めておくと現場が楽になります。


継続的改善(PDCA)の回し方

アーカイブ運用は、改善し続けることで初めて価値を持ちます。

Plan:完璧な計画は不要

小さな計画で構いません。動かしながら調整する前提が重要です。

Do:日常業務に組み込む

特別な作業にせず、通常業務の延長として扱うことで継続しやすくなります。

Check:年1回は必ず振り返る

最低でも年に一度、使われているか、困っている点は何かを確認します。

Act:ルールを柔軟に見直す

最初に決めたルールに固執しすぎないことが、長期運用の秘訣です。


運用体制を成功させた自治体の共通点

成功している自治体には、共通する特徴があります。

担当者一人に背負わせない

チームで支える前提があり、相談できる環境があります。

小さく始めている

最初から完璧を目指さず、できる範囲で始めています。

庁内理解を少しずつ広げている

説明を重ね、味方を増やしています。

外部の知見をうまく使っている

必要なところだけ外部に頼る判断ができています。


まとめ:体制の有無=成功と失敗の分岐点

自治体アーカイブの成否は、技術ではなく体制で決まります。

運用体制は最大の投資対効果

お金をかけなくても、体制を整えるだけで成果は変わります。

担当者を守る仕組みが必要

体制は、担当者を疲弊させないための装置でもあります。

続いていること自体が価値になる

アーカイブは、続いていることが評価につながります。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討したい方はこちら
※現状の運用を前提にご相談を承ります

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。