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作品サイズ・素材・価格の管理ルールの作り方

作品を制作し、展示し、販売していくなかで、多くの作家が無意識のうちに後回しにしてしまうのが「作品情報の管理ルール」です。

サイズ、素材、技法、価格、販売状況――これらはすべて、作品の価値や信用に直結する重要な情報であるにもかかわらず、「なんとなく」「その都度」扱われがちです。

しかし、アーカイブという視点で見ると、作品情報の管理は感覚や記憶に頼るものではありません。

ルールとして明文化し、誰が見ても同じ意味で理解できる状態にしておくことが不可欠です。

本記事では、個人作家が最低限押さえておくべき

サイズ・素材・価格・在庫管理のルール化について、

「なぜ必要なのか」「どう作れば破綻しないのか」を、実務目線で解説します。


結論:ルール化しないと必ず破綻する

まず最初に押さえておきたいのは、作品情報は「増えるほど管理が難しくなる」という事実です。

数点のうちは問題がなくても、10点、50点、100点と増えた瞬間に、曖昧な管理は必ず限界を迎えます。

記憶と感覚に頼る管理の限界

作家自身は「この作品はF10だった」「このシリーズはだいたいこの価格帯」と把握しているつもりでも、その情報は記憶に依存しています。

展示や制作が重なると、記憶は簡単に混線し、誤った情報を伝えてしまうリスクが高まります。

情報の揺れは信用の揺れになる

サイズの表記が作品ごとに違う、素材の言い方が毎回変わる、価格が曖昧――

こうした情報の揺れは、ギャラリーや購入者に「管理が甘い作家」という印象を与えてしまいます。

ルールは自分を縛るためではなく守るため

ルール化というと「窮屈」「自由がなくなる」と感じるかもしれません。

しかし実際には、ルールは作家の創作を縛るものではなく、トラブルや誤解から守るための保険です。


サイズ表記の統一ルール(cm/号など)

サイズは最もトラブルが起きやすい情報のひとつです。

表記方法を統一しないまま運用すると、展示計画や搬入設計で必ず問題が起きます。

単位は必ず統一する

cm、mm、号数が混在すると、比較や検索が極端にしづらくなります。

アーカイブでは「mm表記で統一し、号数は補足情報として扱う」など、主軸を決めることが重要です。

縦×横×奥行きの順序を固定する

立体作品や額装作品では、表記順が入れ替わるだけで別作品に見えてしまいます。

縦×横×奥行き、または高さ×幅×奥行きなど、順序を明確に決めておく必要があります。

額装・台座の扱いを分けて考える

作品サイズと展示サイズを混同すると、展示設計で齟齬が生じます。

「作品本体サイズ」と「展示時サイズ」は、可能であれば別項目として管理するのが理想です。


素材・技法の表記統一(専門用語の揺れをなくす)

素材や技法は、作品の専門性や価値を伝える重要な要素です。

だからこそ、表記の揺れは極力なくす必要があります。

言い換えの多さが混乱を生む

「キャンバスに油彩」「油絵」「油彩画」など、意味は近くても検索上は別物です。

アーカイブでは、正式表記を1つ決め、それ以外は使わないという姿勢が重要です。

マスターデータを作るという考え方

よく使う素材・技法はリスト化し、そこから選ぶ方式にすると揺れを防げます。

これは後にAtoMやOmekaなどのシステムに移行する際にも大きな助けになります。

一般向けと専門向けを意識する

必要に応じて「正式名称」と「説明用表記」を分けることで、専門性と分かりやすさを両立できます。


価格管理の基本(公開価格/非公開価格)

価格は感情が入りやすい情報だからこそ、ルールが必要です。

特に展示や委託が増えるほど、価格管理の重要性は高まります。

価格は必ず数値で管理する

「だいたいこのくらい」という感覚的管理は、後々の価格調整を困難にします。

アーカイブ上では必ず数値で記録することが基本です。

公開価格と管理価格を分ける

WebやSNSで公開する価格と、内部で管理する最低価格や取引価格は分けて考えるべきです。

この区別をつけるだけで、交渉時の混乱が激減します。

価格改定の履歴を残す

価格が変わった場合、その理由と時期を記録しておくと、後年の振り返りや評価に役立ちます。


販売済・在庫の管理ルール

作品が「今どこにあるのか」を即答できる状態は、作家としての基本的な信頼条件です。

ステータスを明確に定義する

在庫、展示中、委託中、販売済、返却済など、状態を言葉として固定します。

曖昧な表現は避けるべきです。

販売済作品もアーカイブから消さない

販売済=不要、ではありません。

むしろ販売実績は作家の評価を支える重要な履歴です。

所在情報は常に最新にする

作品の移動があった場合は、必ず更新するというルールを自分に課すことが大切です。


フォーマット化する方法(テンプレート例)

ルールは「文章で決める」だけでは定着しません。

入力フォーマットとして形にすることで、初めて実務で機能します。

項目を最小限に絞る

最初から完璧を目指さず、必須項目だけに絞ったテンプレートが長続きします。

Excel・スプレッドシートで十分

専用システムがなくても、表形式のテンプレートで問題ありません。

重要なのはツールではなく項目の統一です。

1作品1行の原則

1作品を1行で管理することで、一覧性と検索性が大きく向上します。


ミスを防ぐための“入力ガイドライン”の作り方

自分しか使わないアーカイブであっても、ガイドラインは有効です。

数年後の自分は「他人」だと考えるとよいでしょう。

入力例を必ず示す

文章で説明するより、正しい入力例を1つ示す方が効果的です。

迷ったときの判断基準を書く

「どちらでもいい」場面こそ、判断ルールを明記しておくことが重要です。

定期的に見直す前提で作る

ガイドラインは固定ではなく、更新されるものとして扱う方が健全です。


まとめ:小さなルールが大きな信頼を作る

作品サイズ・素材・価格・在庫――

これらは一見すると地味で、創作とは無関係に思えるかもしれません。

しかし、これらの情報が整理され、安定して管理されていることは、

作家としての信頼と継続性を支える土台になります。

完璧なシステムは必要ありません。

まずは小さなルールを決め、守り、更新していくこと。

それこそが、アーカイブ思考の第一歩です。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から整理したい方はこちら
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この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。