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作品データベース設計の基本|入力項目・必須データ一覧

作品データベースは、アーカイブ運用の「心臓部」です。

ここがきちんと設計されていれば、作品管理・展示企画・販売・広報、すべてがスムーズに回り始めます。

逆に、項目設計が曖昧なまま運用を始めると、数ヶ月でデータが揺れ始め、分類や検索が破綻します。

この記事では、アート・デジタルアーカイブの中核となる「作品データベース」の設計を、

作家・ギャラリー・自治体資料館のすべてで使える形で体系化します。


作品データベース設計の全体像を理解する

■ データベース設計は「最初の30分」が命

作品管理を始める際、多くの人が

「とにかく写真を入れればOK」

「まずはフォルダに作品を入れていこう」

と考えてしまいます。

しかし、作品アーカイブが成功するかどうかは 最初の設計で9割決まります。

作品データベース設計の基本構造は次の3つです。

  1. データ項目を決める(メタデータ設計)
  2. 入力ルールを決める(フォーマット統一)
  3. 画像データとどう紐付けるか決める

この3点が決まっていれば、

AtoM・Omeka・WordPress・Excel どのツールを使っても運用できます。

■ “後から直す”は地獄になる

アーカイブの失敗原因の多くは「項目を後から追加/修正」すること。

データが増えたあとで項目をいじると、

・入力揺れが発生

・どの項目が正式なのか分からない

・検索性が落ちる

・担当者の負荷が爆発

こうした問題を避けるため、最初に「必要最低限+ちょっとだけ余裕」を持った設計を行うことが重要です。


必須項目(タイトル・サイズ・素材・制作年など)

アーカイブとして必須の項目は以下。

これだけあれば 作品管理・展示・販売・移動管理すべてに対応できます。


■ 作品データベースの必須項目(8〜12項目)

(※ 推奨フォーマット付き)

① タイトル(Title)

  • 例:春の庭
  • 無題の場合:「無題(2023)」など工夫する
  • 一覧性のため、命名ルールを統一する

② 制作年(Date)

  • 例:2023
  • 年月まであれば「2023-04」
  • 不明な場合は「不詳」と統一

③ サイズ(Size)

  • 例:530×455 mm(F10)
  • 単位は mm に統一
  • 額込み/額無しは別項目で管理可

④ 素材・技法(Medium / Technique)

  • 例:キャンバスに油彩
  • 表記揺れを防ぐため、マスターデータを作っておく

⑤ カテゴリ・ジャンル(Type)

  • 例:絵画、立体、写真、テキスタイル
  • アーカイブの検索性を高める最重要項目の一つ

⑥ 所蔵・所在(Location)

  • ギャラリー:在庫 / 販売済 / 返却済
  • 自治体:収蔵庫 / 常設展示室 / 仮保管室 など

⑦ 価格・販売ステータス(Price / Status)

  • not mandatory だが、ギャラリー運用では必須
  • 例:¥88,000 / 売約

⑧ 作家名(Creator)

  • 複数作家展では絶対必要
  • 読み方・英語表記も持っておくと海外対応が楽

⑨ 作品番号(ID)

  • アーカイブのキーになる項目
  • 推奨:作家ID+年+通し番号

    例:NK-2023-014

⑩ 画像(Image)

  • 原本画像と公開画像を分ける
  • ファイル名は作品番号で統一

あると便利な項目(ストーリー・参考資料)

アーカイブが「資料庫」から「PR資源」に変わる項目です。

■ 推奨の追加項目

① 説明文・コンセプト(Description)

  • 展示キャプションにも流用できる
  • 200字前後で統一すると見やすい

② 作品の背景・ストーリー(Narrative)

例:

「コロナ禍で外出できなかった時期に、自宅の庭をモチーフに制作」

③ 展示歴(Exhibition history)

  • アートの価値を高める重要要素
  • 年ごとに入力:

    例:

    2022|個展「光のかたち」Gallery X

④ 参考資料(Reference / Source)

  • 制作スケッチ
  • 文章
  • 取材記事リンク

⑤ タグ(Keywords)

  • 色、季節、場所、シリーズ名など
  • SNS発信にも活かしやすい

⑥ 額あり写真・設置写真

  • 顧客向けのイメージとして強力
  • ギャラリーの販売率が大きく変わる

販売と所在のデータ設計(購入者・返却管理)

販売や在庫管理を行うギャラリー・作家は、

このセクションが“実務最大のポイント”になります。


■ 販売管理の項目

① 購入者情報(Buyer)

  • 氏名/連絡先
  • 個人情報扱いのため非公開設定必須

② 販売日(Sold date)

③ 支払い方法(Payment)

  • 現金・振込・クレカなど

④ 発送状況(Delivery status)

  • 未発送/発送済/ギャラリー預かり

■ 作品所在管理

① 現在地(Current location)

  • ギャラリー
  • 作家宅
  • 顧客
  • 倉庫
  • 他展覧会へ貸出中

② 返却予定(Return schedule)

特に複数作家を扱うギャラリーでは「返却漏れ」が発生しやすいので必須。

③ 作品の状態(Condition)

  • 良好/傷あり/修復必要
  • 展示借用時のトラブル回避に必要

画像データとの紐付けルール

画像との紐付けはアーカイブの安定運用の要。


■ ルール① ファイル名は作品番号で統一

例:

NK-2023-014.jpg

NK-2023-014_detail1.jpg

NK-2023-014_install.jpg

「作品番号」をキーにすると、

どのシステムでも参照が安定します。


■ ルール② 原本(RAW/高解像度)と公開用を分ける

  • 原本:バックアップ用、修正不可
  • 公開用:横1200px の軽量画像

クラウドの容量消費を抑えるコツでもある。


■ ルール③ 画像の階層を固定する

推奨:

/Originals/Creator/Year/作品番号.jpg

/Public/Creator/Year/作品番号.jpg


テンプレート例(作家/ギャラリー向け)

ExcelでもNotionでも共通で使えるテンプレートです。


■ 作家向け(個人アーカイブ)

項目内容
作品番号NK-2023-014
タイトル春の庭
制作年2023
サイズ530×455 mm
技法油彩/キャンバス
カテゴリ絵画
所在自宅
価格80,000円
説明文○○をテーマに制作
展示歴
画像NK-2023-014.jpg

■ ギャラリー向け(委託作品管理)

項目内容
作家名中村花子
作品番号HK-2022-002
タイトル夜の散歩
価格120,000円
在庫状況ギャラリー
状態良好
展示歴2023 個展「夜の記憶」
販売履歴
返却予定2025/4
画像HK-2022-002.jpg

まとめ:項目設計で95%が決まる

アーカイブ運用は、写真の撮り方でもシステム選びでもなく、

“最初の項目設計”で95%が決まります。

  • 入力項目を減らしすぎると検索が弱くなる
  • 逆に増やしすぎると現場が混乱する
  • 画像との紐付けが曖昧だと数ヶ月で破綻する

だからこそ、

「使う項目」だけを厳選し、“入力ルール”を固定すること

が最も重要です。

ここをしっかり固めておけば、AtoMでもOmekaでもWordPressでも、

安定した作品データベースを構築できます。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討したい方はこちら
※現状の運用を前提にご相談を承ります

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。