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作品の分類方法(ジャンル・技法・シリーズ)を体系化する

アートアーカイブを作ろうとすると、多くの人が最初につまずくのが「分類」です。

ジャンルなのか、技法なのか、シリーズなのか。あるいはその全部なのか。

分類を考え始めると、どんどん細かくなりすぎて混乱してしまった、という経験を持つ作家やギャラリーは少なくありません。

しかし、分類はアーカイブのための「おまけ」ではありません。

分類とは、作品を探しやすくするためだけでなく、作品群を分析し、価値を説明し、未来に引き渡すための構造そのものです。

本記事では、アートアーカイブにおける分類を

「ジャンル」「技法」「シリーズ・テーマ」という3つの軸から整理し、

細かくなりすぎず、かつ長期運用に耐える分類体系の作り方を解説します。


分類の役割:“探しやすさ”と“分析しやすさ”を作る

分類というと「整理整頓」のイメージを持たれがちですが、アーカイブにおける分類の本質はそれだけではありません。

分類は、アーカイブを「使える情報」に変えるための仕組みです。

分類は検索性を支える土台になる

アーカイブで最も頻繁に行われる行為は「探す」ことです。

特定のジャンルの作品を一覧したい、過去のシリーズをまとめて確認したい、技法別に制作の変遷を見たい。

こうした検索行為は、分類が整理されていなければ成立しません。

分類は、検索という行為を可能にする前提条件なのです。

分類は作品分析の視点を生む

分類があることで、作品群を俯瞰できます。

たとえば「油彩作品が何点あり、いつ頃集中して制作されているか」といった分析は、分類がなければ不可能です。

アーカイブは保存だけでなく、作品理解のための分析基盤でもあります。

分類は第三者への説明力を高める

ギャラリーやキュレーター、自治体職員が作品を扱う際、分類は説明の言語になります。

「この作家は立体と平面を横断しています」「このシリーズは初期の実験的な位置づけです」

こうした説明は、分類が体系化されていて初めて説得力を持ちます。


ジャンル分類(絵画/立体/写真/工芸など)

ジャンル分類は、アーカイブにおける最も基本的な分類軸です。

まずは「作品の形態」による分類を明確にすることで、全体構造が安定します。

ジャンルは「形態」で判断する

ジャンル分類では、テーマや内容ではなく、作品の物理的・形式的な特徴で分類します。

絵画、立体、写真、映像、工芸など、誰が見ても判断できる基準にすることが重要です。

ジャンル数は増やしすぎない

ジャンルを細かく分けすぎると、入力時に迷いが生じ、分類の揺れが発生します。

基本は5〜8種類程度に抑え、特殊な作品は「その他」に一時的に含める運用が現実的です。

ジャンルは後から統合できるようにする

ジャンル分類は将来的に統合・再編される可能性があります。

最初から細分化しすぎず、「後からまとめられる」設計にしておくことで、長期運用が楽になります。


技法分類(油彩/日本画/シルクスクリーンなど)

技法分類は、作品の制作方法に焦点を当てた分類です。

特に作家の制作プロセスや表現の変化を追う際に重要な役割を果たします。

技法はマスターデータ化する

技法名は表記揺れが起きやすい項目です。

「油彩」「油絵」「Oil painting」などが混在すると、検索性が著しく低下します。

あらかじめ正式名称を決め、選択式で入力する仕組みが理想です。

複数技法は併記を許容する

現代美術では、複数の技法を組み合わせた作品も多く存在します。

技法分類では「1作品1技法」に固執せず、複数選択を前提とした設計が有効です。

技法分類は分析用と割り切る

技法分類は、必ずしも一般公開向けとは限りません。

内部分析や制作履歴の把握を目的とし、「見せる分類」と「管理する分類」を分けて考えることが重要です。


シリーズ・テーマ分類(作家独自の体系)

シリーズやテーマは、作家固有の世界観を表す分類軸です。

これはジャンルや技法とは異なり、作家自身の言葉で定義されるべき分類です。

シリーズは作家の思考の単位

シリーズとは、一定期間やテーマのもとで制作された作品群のことです。

アーカイブ上でシリーズを明確にすることで、作家の思考の流れが可視化されます。

テーマ分類は緩やかでよい

テーマは固定的に定義する必要はありません。

「自然」「都市」「記憶」といった緩やかな括りでも十分に意味を持ちます。

シリーズは後から命名してもよい

制作当初にシリーズ名が決まっていない作品も多くあります。

アーカイブでは、後から振り返ってシリーズとして整理することも許容されるべきです。


分類の粒度(細かすぎ問題)の解決法

分類を考える際、必ず直面するのが「どこまで細かく分けるか」という問題です。

分類は運用できる粒度が正解

理論的に正しくても、入力や管理が回らなければ意味がありません。

日常運用で迷わず使える粒度こそが、正しい分類です。

迷ったら「一段上」にまとめる

分類で迷った場合は、細かくするよりも一段上の分類にまとめる方が安全です。

後から分割することは可能ですが、統合は非常に手間がかかります。

入力者の視点を最優先する

分類設計は、実際に入力する人の視点で考える必要があります。

専門家だけで決めず、現場の負担を考慮することが重要です。


タグとの違い(階層 vs. 横断)

分類と混同されやすい概念が「タグ」です。

両者の役割を理解することで、アーカイブは格段に使いやすくなります。

分類は階層構造を持つ

分類は、上位から下位へと構造を持つ体系です。

ジャンル→技法→シリーズ、といった階層がそれにあたります。

タグは横断的なキーワード

タグは、分類を横断する補助的な情報です。

色、季節、モチーフ、場所など、自由度の高い情報を扱うのに適しています。

タグは増えすぎない管理が必要

タグは便利な反面、増えすぎると逆に検索性が落ちます。

追加ルールを決め、定期的に整理する運用が欠かせません。


まとめ:分類は“作品世界の地図”になる

分類は単なる整理作業ではなく、作品世界を読み解くための地図です。

分類は価値を伝えるための構造

整理された分類は、作品の背景や文脈を第三者に伝える力を持ちます。

分類は未来の自分と他者のためにある

今は必要なく見えても、数年後、必ず役に立つのが分類です。

未来の自分、そして作品を引き継ぐ誰かのための準備でもあります。

完璧を目指さず、育てていく

分類は一度作って終わりではありません。

運用しながら見直し、少しずつ育てていくものです。

その前提に立つことで、アーカイブは長く機能し続けます。

デジタルアーカイブ化を「導入すべきかどうか」から検討している方はこちら
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この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。