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同じサイズの絵画作品、価格はどう決める?

アートの価格設定は、作家にとって永遠の悩みだと思います。特に、同じサイズの作品なのに、制作にかかる時間や技法が異なる場合、どうやって値段を決めるべきか――これは、私自身も何度も考えてきました。

ギャラリーやコレクターの立場からすると、同じ作家の作品が大きく値段が違うと「どうして?」と思われることがある。たしかに、作家側からすると、「この作品は細かく描き込んでいるから高くしたい」「こっちはサラッと描いたから安くしたい」と思うのは当然かもしれません。でも、アートを買う側は制作時間までは見えません。購入者が目にするのは、作品そのものと、その価格だけ。だからこそ、価格設定に統一感がないと、かえって販売のハードルが上がることがあります。

私自身、過去に「時間をかけたから値段を高くしたい」と作家さんから相談されたことが何度もありました。しかし、実際に販売するときには、単純に制作時間だけで価格を変えるのは難しいと感じました。むしろ、サイズやシリーズごとに価格をある程度固定することで、買い手にとって分かりやすくなり、結果的に売れやすくなることが多かったです。


技法や作業量の違いは価格に反映すべきか?

作品の制作過程を考えると、同じサイズでも、技法によって手間が大きく変わるのは間違いありません。たとえば、油彩とアクリルでは乾燥時間も違うし、ミクストメディア作品のように素材を組み合わせているものは、単純なペイント作品よりも時間もコストもかかる。こういう場合、技法の違いを価格に反映するのは理にかなっています。

ただ、どこまで価格差をつけるかは悩ましいところです。私は過去に、ミクストメディア作品を通常のキャンバス作品よりも大幅に高くしたことがありますが、「この値段差は何?」と聞かれたことがありました。そのとき、「技法が違うから」と説明しても、購入者にはピンとこないこともある。結果として、少し価格差を抑えて、「これは特別な技法だから若干高め」という程度にしたほうが、購入者の理解を得やすかったです。

また、細密に描き込んだ作品と、シンプルな構図の作品でも、作業量は明らかに違う。だからといって、極端な価格差をつけると、シンプルな作品の価値が低く見られてしまうリスクもある。結局のところ、価格差をつけるなら、「あくまで分かりやすい範囲で」「作家として納得できる形で」調整するのがベストだと思います。


バリエーションとしての価格設定ならアリ?

価格を変えること自体は、決して悪いことではありません。ただし、それをバリエーションとして明確に打ち出せるかどうかが重要だと思っています。たとえば、「このシリーズは特別に手間をかけているので高め」「このシリーズはシンプルな表現を大事にしているので手頃な価格」といった形でシリーズごとに価格帯を分けると、購入者にも納得してもらいやすい。

過去に「Aシリーズは細密画」「Bシリーズは即興的なドローイング」といった形で分けて、価格を変えた販売したことがあります。その結果、作品の価値を理解してもらいやすくなり、両方のシリーズがバランスよく売れるようになった経験があります。

また、エディション(限定数)をつけることで、価格にバリエーションを持たせるのも一つの手です。たとえば、版画や写真作品なら、エディションが少ないものは価格を高めに設定し、多く刷られているものは手頃な価格にする。この方法なら、同じ作家の中で価格帯を揃えつつ、バリエーションを生み出すことができます。


価格の統一感を保つことのメリット

作家としては、「この作品は特別だから高くしたい」「これは簡単だから安くしよう」と思うのは自然です。でも、ギャラリーでの販売やコレクターの立場から考えると、作家の価格設定がある程度統一されているほうが、購入しやすくなることが多いと感じます。

私も昔は、値段は作家さんが自由に決めていいと思っていましたが、いざ販売するとなると、価格のばらつきがあると「どの作品を買えばいいのか迷う」という声を聞くことがありました。それを機に、ある程度の統一感を持たせるようにしたところ、作品がスムーズに売れるようになったんです。

もちろん、完全にすべての作品を同じ価格にする必要はない。でも、「大まかな価格帯を決めておく」「シリーズごとに価格の基準を作る」「技法ごとの価格差は最小限にする」といったルールを持つことで、購入者の混乱を防ぎながら、適切な価格設定ができると思います。


まとめ:作家としての納得感を大事にしつつ、購入者の視点も考える

最終的に、価格設定は作家自身の納得感が重要です。ただし、それが購入者にとって分かりやすいものであることも大切。

  • 技法や作業量の違いは価格に反映してOK。ただし、極端な価格差は避ける
  • シリーズごと、エディションごとに価格を変えるのはアリ
  • バラつきを抑えて、ある程度の統一感を持たせたほうが販売しやすい

このバランスをうまく取ることが、作家としての成長にもつながるのではないかと思います。私自身もまだ試行錯誤中ですが、これからも自分なりの最適な価格設定を模索していきたいと思っています。

この記事を書いた人
ArtLibの長岡です。 アートイベントの取り仕切りを10年にわたって続けてきました。 現在は百貨店のアートギャラリースペースにて、作家さんの展示会場の運営を行っています。 絵画を年間2000万円の絵画を販売して、学んだことを公開していきます。