個展の搬出が終わった夜、出展していた作家さんから「SNSって、全部やった方がいいですか?」と聞かれたことがあります。プロフィール欄にInstagramのリンクを入れていたら、来場者から「TikTokもやってますか?」と聞かれたと言うんです。
全部やる必要はないと思っています。ただ、「どれを選ぶか」を何となく決めてしまうと、せっかくの発信が空回りします。各プラットフォームには全然違うルールと文化があるので、作家として何を達成したいのかによって、向いているSNSが変わってくるんです。
今回は、現場でたくさんの作家さんを見てきた立場から、X・Instagram・TikTok・noteをどう使い分けるかについてまとめました。
まず整理しておくと、各SNSには「得意なこと」が全然違います。
| SNS | 強み | 向いているコンテンツ |
|---|---|---|
| 視覚的な訴求力 | 作品・展示・ポートフォリオ | |
| X(旧Twitter) | 速報性・拡散力 | 告知・制作中ツイート・交流 |
| TikTok | 新規リーチ力 | 制作動画・タイムラプス・ビフォーアフター |
| note | ファンとの深い関係 | 制作過程・思考の記録・価値観 |
「全部やれ」とよく言われますが、4つ同時に運用すると更新が滞って、どれも中途半端になりがちです。まず「何のためにSNSを使いたいのか」を1つ決めて、それに合ったプラットフォームを軸にするのが現実的だと思っています。
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Xは「今この瞬間」を届けるのが得意なSNSです。
個展の告知、搬入完了の報告、在廊のお知らせ、イベント当日の様子——こういった時事性の高い情報は、InstagramよりXの方が拡散されやすい傾向があります。「今日は下塗り完了した」「なんか思ってたのと違う方向に進んできた」といったつぶやきも、フォロワーとの距離を縮めるのに効きます。完成した作品を見せることよりも、「作っている作家本人」を見せるのがXの強みです。
ただし、Xは拡散のスピードが速い反面、投稿がすぐに流れてしまいます。作品自体を深く見せるには向かないので、作品の詳細はInstagramに誘導する形が王道です。
TikTokは今、アーティストにとって最も「知ってもらいやすい」プラットフォームかもしれません。
フォロワー数がゼロでも、アルゴリズムが「見てくれそうな人」に動画を届けてくれるので、全くの新規ユーザーへのリーチが他のSNSと桁違いです。向いているのは、制作のタイムラプスやビフォーアフター、「絵の具を混ぜる瞬間」「筆が画面を滑る映像」などの視覚的に映えるコンテンツです。TikTokでたまたまバズって一気にInstagramのフォロワーが増えた作家さんも、実際に複数見てきました。
難しいのは、継続的な動画制作のコストです。15秒〜1分の動画でも、撮影・編集・投稿まで含めると相当な労力がかかります。まず月4〜8本程度から始めてみて、自分のペースで続けられるかを試してみるのがいいと思います。
noteは、作品ではなく「作家の言葉」を届けるためのプラットフォームです。
「なぜこの作品を作ったのか」「この素材を選んだ理由」「制作中に気づいたこと」——こういった内側の思考を文章で届けることができます。一度読んでもらえると、他のSNSより強くファンと繋がれます。作品を買った人が「作家のことをもっと知りたい」と思ったとき、Instagramの写真だけでなく、noteの文章を読んでくれる人が増えてきています。
ちなみに、noteは有料記事・メンバーシップの機能があるので、発信と収益を同時に作れる唯一のプラットフォームでもあります。制作記録を積み上げてから有料化に移行する流れは、作家活動の長期的な武器になります。
複数のSNSを使う場合、それぞれをばらばらに運用するのではなく、「上流→下流」を意識した導線を設計しましょう。
たとえば——TikTok(新規に届く)→ Instagram(作品の世界観を見せる)→ note(深く知ってもらう)→ EC・個展(購入・来場)というルートを意識しておくだけで、発信の目的がはっきりします。TikTokで見た人がInstagramに飛んで、プロフィールリンクからnoteやサイトに来る。この流れを設計しておくことが重要です。
全部やる必要はないですが、「自分のSNS地図」を1枚頭の中に描いておくことで、投稿内容の優先度がぐっと整理されると思います。
どのSNSを軸にするかは、その人の制作スタイルや生活リズムによって違います。私が見てきた作家さんたちの中で、SNSが安定している人に共通しているのは、「好きなように更新できる場所」を1つ見つけていることでした。まず一つ、続けられる場所から始めてみてください。
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